お泊まりナイト｜リアクション

お泊まりナイト

■小学生だってあそびたい！
　佐藤瀬莉は小学生である。
　なんだか沢山フシギに接したせいでちょっぴり忘れがちだが、お友達と遊んだりしたいし、宿題を放り出してお布団と仲良くしたりしたいし、なんなら夜更かししてテレビゲームで遊んだりしたいお年頃である。
　更に言うなれば、お友達の家に泊まって普段と違うハッピーな時間を過ごしたい年頃なのだ。
　そんなわけで。
　今日はお友達の家でのお呼ばれお泊まり会である。
　持参したのはラッピングした焼き菓子。
　ママが持たせたお土産である。
　甘いバターの香りのするクッキーを広げて、注文したピザを広げて、コーラのボトルを開けばそこは少女たちの楽園だった。
　親が留守中の隙をついて花咲くように現われた楽園で、少女たちははしゃぎ倒した。

　からから笑ってお喋りに興じたり、対戦ゲームで騒ぎ倒したり。
　自由を手にした少女たちに際限も遠慮も必要なかった。
　お菓子をつまみながらアニメ映画を見ることもあれば、トランプカードを広げて一喜一憂することもある。
　少女の楽園に規則はない。ゲームで負けたら顔に水性ペンで画を描かれる罰ゲームが施され、やがて勝ち負けがどうでもよくなりお互いの顔に画を描いてはお腹を抱えて笑い合う。
　一番顔に描かれた瀬莉の顔はもはや真っ黒だったが、それが不思議とおかしくてたまらなかった。
　享楽の後はお風呂に入って顔の絵やら汗やらを落として、パジャマに着替えてファッションショーごっこである。
　お布団で作ったステージをキャットウォークで歩いては、くるりと回ってみせる瀬莉。
　少女たちの祭典を止めるものはない。
　やがてお菓子も食べ尽くし、コーラも最後の滴が落ちる頃、少女たちの楽園は眠りの霧へと消えていく。
　朝が来る頃にはきっと、いつもの明日がやってくるだろうけれど。
　楽園はいつも、あの日に咲いたままだろう。
　やがて瀬莉が大人になって、少女を忘れたその時にふと思い出すのだ。
　世界の全てがおもしろくておかしかった、あの楽園の存在を。

このページにイラストを設定する