鴨川の　雪にはじけて　シャチしぶき｜リアクション

鴨川の　雪にはじけて　シャチしぶき

■おみやげ
　巨大なぬいぐるみが当たる福引き大会がある。毎日かは分からないが頻繁にやっているようで、コインを握った子供たちが列を成している。
　その前を修がなんとなあくうろうろしていた。
「八神君、欲しいの？」
「いや……ああ……」
　歯切れの悪い修。どうやら可愛いもの好きの癖が出たはいいが、男子高校生がぬいぐるみ目当てってのもバツがわるいということらしい。
　その辺りをなんとなーく察した夏朝は、『一緒にやろうよ』と言って列に並んで見せた。
　――十分後。
　二人して小さなぬいぐるみを手に、夏朝と修はお土産ショップの近くを通りかかったところで、ちょっと古いタイプのガシャ台（コインを入れてレバーを回すと商品がランダムで入ったカプセルが出てくるやーつ）を見つけて足を止めた。
「八神君、これもやってみない？」
　見ると、水族館限定フィギュアの台と貝殻おみくじの台が並んでいた。さすがテーマパークだけに芸が細かい。
　頷きあって引いてみると、二人して『イルカさん』のおみくじが出てきた。

　さて、鴨川シーランドの名物お土産はそれなりに沢山あるが、美咲紀は必ず手に入れようと思っていたものがあった。
　軽く小学生の背丈くらいはある巨大なぬいぐるみである。
　その持ち帰りに困りそうなぬいぐるみは価格にして約七千円。見た人が『うわー』という顔をするためだけにありそうなグッズだが、買って帰る人も勿論いた。っていうかそれが美咲紀だった。
「一人じゃ持ち帰れないから、宅急便をお願いしないとですね。けどそれなら……」
　持ちきれなくてもいいやと思った途端、美咲紀の財布がゆるんだ。
　絶対使いそうに無いポストカードとかキャンディとか、大手企業の（パッケージだけが特別な）限定お菓子だとか、どうぶつさんをかたどったドーナツだとかを購入した。
　ちなみにこのどうぶつさんをかたどったドーナツはネットでも有名なあのドーナツである。特別にシャチやセイウチをかたどったタイプが販売されていて、これはこれで結構な限定アイテムだった。
「先輩、このベルーガ喋りますわ！」
『しゃべりますわ！』
「う、うん……」
「ああ、シャチに乗った生徒会長……いいかも……」
「これ欲しい！　あとで一本あげるね？」
「さてはお土産でもたかる気だな？」
「写真集が地味に欲しくなりますねー」
　ふと見ると、お土産ショップもだいぶ賑わっている。
　そんな中で、みつびが試食のかまぼこをつまんで『セーフ！』とか言っていた。
「オオサンショウオの抱き枕、かわいい」
　展示品の抱き枕をぎゅーっとして感触にひたるみつび。
　帰りの電車でかさばりそうだが、言うほど持って帰れない大きさではない。サーフボードよりは小さいはずだ。
「よし、抱えて帰ろっ！　人魚のぬいぐるみかあ、これも……」
　ちょいっとつまんで掲げるみつび。
　なんだか自分にダブる気がして、ほっこりと笑った。
「また、夏にでも来よっかな」　

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あとがき

担当マスター：青空綿飴
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鴨川シーランド、お楽しみ頂けたでしょうか。

ご存じの方もいらっしゃったようですが、この施設は鴨川に実在するテーマパークをモデルにしております。
本当に見事な場所なので、千葉の南の方に遊びに行きたくなったら是非寄ってみてくださいね。きっとその一日を楽しく過ごせると思います。
割とつい最近、約２０年ぶりに行ってきた青空綿飴でした。

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