みんなで楽しいひなまつり！｜リアクション

みんなで楽しいひなまつり！

　屋台がずらりと並ぶ寝子島神社参道。その端に立ちながら、おっとりと美しい笑みを浮かべる女の子がいた。

「ふふ、今日のお祭りも屋台がたくさん」

　彼女の名は巫部紫苑。その上品な雰囲気と、見事な爆乳に目がいきがちだが、彼女の特筆すべき点はその体内にあった。
　胃袋。そう、胃袋である。
　そのボンキュッボンな体型からは想像もつかないほどの頑強で、底無しの胃袋。そこに天井知らずの食欲がつけば鬼に金棒というものだ（うん、行事が違うか）。その胃袋で閉店に追い込んだ飯屋は数知れず……かどうかは定かではないが、ともかく彼女には『食い倒れ』という単語はないのであった。

　本日、彼女の目の前には数々の屋台が軒を並べ、美味しそうな匂いをあちこちから漂わせている。それを眺めながら紫苑は思っていた。
（とりあえず、屋台は全部回りたいですね……メニューも全部頼んで……考えただけで涎が出てきそうです）
　柔和な顔の下でこんな事を考えているなどとは誰が想像するだろうか。それどころか色気すら漂わせている紫苑が屋台の前で立っていたので、血気盛んな店主達は紫苑に何とか自分の店に来て貰おうと、あちこちから声をかける。そんな中、紫苑の美しい唇が動いた。

「……それじゃ、順番に回っていきましょう♪」

　そして紫苑は端の焼き鳥の屋台に歩み寄った。店主が大喜びで声をかける。
「らっしゃい、お嬢さん！　何にする？」
「ええっと……全部くださいな」
「はいよ、全部ね！　……全部？」
「ええ、全部お願いします」
「ぜ、全部って……ウチは鳥だけでも５種類、その上豚や牛、イカまであるけど……全部かい？」
「あら、とうもろこしを忘れていますわ。醤油が香ばしくて美味しいですよね♪　全部でおいくらですか？」

　焼き鳥の店主は何度も止めたが、紫苑が代金を払ってしまったので断る事も出来ない。不承不承焼き上がった物から紫苑に手渡し始めたが、その店主の顎がカクンとはずれた。
　紫苑は手渡された先からペロリと難なく平らげていったのである。
　そして最後の焼きもろこしを粒１つ残さず綺麗に平らげると、紫苑は店主に向かってにっこり微笑んだ。
「ご馳走様でした♪」
　驚く店主は声も出ない。そしてこのモンスター女子高生は満足して帰っていく……かと思ったら、紫苑は横に数歩ずれ、お好み焼きの店主ににっこり笑った。
「こんにちは。豚焼き、ネギ焼き、海鮮焼き、モダン焼き……全部下さいな♪」
　紫苑は妖しくペロリと唇を舐める。お好み焼きの店主の顔が青くなった。