みんなで楽しいひなまつり！｜リアクション

みんなで楽しいひなまつり！

　ひなまつり。お父さんもお母さんも急な仕事ででかけちゃってねぇ……。
　何もしないっていうのも……寂しいよねぇ？

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　マイペースな小学生曖浜瑠樹は、ふかふかしている物が好きだ。縫いぐるみも好きだ。楽しい事も好きだ。そこに男女の差はないと無自覚に理解している。だから、ひなまつりだって楽しいのだ。
　せっかくのひなまつり。１人で家にいるのもつまらない。
（……神社なら、面白い物あるかなぁ？）
　瑠樹は家を出て、寝子島神社を目指して散歩する事にした。

　ずんずんずんずん瑠樹は進む。参道商店街にさしかかると、ぐっと人出が多くなった。
（わ、賑やかだねぇ！）
　楽しそうな雰囲気に瑠樹の胸も期待に膨らむ。そしてもうすぐ神社の参道、という所で友人の姿を発見した。
「桃井さん、こんにちはー！」
　クラスメイトの桃井かんなだ。かんなは……なんと着物姿だった。瑠樹の顔を見ると、恥ずかしかったのだろうか、かんなの頬がちょっと赤くなった。
「うわぁ、桃井さん可愛いねぇ！」
　瑠樹はかんなの方に行き、にこにこ顔でかんなに言った。
「な、何よ、曖浜！　着ちゃ悪い？」
　かんなはプンと横を向いて口を尖らす。瑠樹はううんと首を振った。
「そんなことないよぉ、とっても似合ってるよぉ！」
　瑠樹のまじりけ無い褒め言葉に、かんなはますます赤くなる。かんなは下を向いて、本当に小さな声で、
「……ありがとっ」
と呟いた。
「うん？　なぁーに、桃井さん？」
「な、なんでもない！　私友達待たせてるからもう行くね！」
　かんなは慌てて言うと、瑠樹に背を向け歩き出した。その背中に瑠樹が声をかける。
「また遊ぼうなぁー！」
　するとかんながくるりとこちらを振り向いた。
「神社でひなあられも配ってるから、上まで行っても楽しいよ！」
　瑠樹の目が大きくなった。
「教えてくれてありがとな、桃井さぁーん！」
　笑顔でぶんぶんと手を振る瑠樹に、ほんのちょっとだけ手を振り返すと、かんなは人混みに消えていった。
（そっかぁー、神社は色々楽しそうだねぇ）
　かんなを見送ると、瑠樹は目の前に続く参道に目をやる。そしてにっこりと頷いた。
「よぉーし、突撃だー！」

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　人の気配がしばらく途絶えていた曖浜家に、可愛らしい声が響いた。
「ただいまぁー！」
　神社で沢山遊んできた瑠樹だ。その声にお留守番をしていた飼い猫のまちかが顔を出し、にゃあと鳴いた。
　瑠樹はまちかを一撫ですると、よっと抱っこをし、２階の自分の部屋に上がっていった。

　瑠樹の部屋にはたくさんの縫いぐるみがあった。実は神社で綺麗なひな飾りを見て来た瑠樹。帰り道に色々考えていたのだ。
　男である自分の部屋にはひな飾りはない。それは、当たり前なのかもしれない。でも。
「何もしないっていうのも……寂しいよねぇ？」
　瑠樹はお気に入りの縫いぐるみ達に微笑んだ。

　かくして縫いぐるみ達は晴れ舞台を与えられる事になった。瑠樹はベッドの上にランドセルや箱を置き、その上に布団を被せる。そう、それは即席のひな壇。瑠樹は３段のひな飾りを作ろうというのだ。

　お内裏様は、焦げたサンマさんぬいぐるみ。
　お雛様は、ラピちゃん。
　三人官女が、桃色うさぎの縫いぐるみ、白猫のリコーダー入れ、かぼちゃ顔の猫にサンマさんがくわえられている置物。
　五人囃子が等身大のサンマさんクッション、羊の縫いぐるみ、モコヌのぬいぐるみ、茶虎猫にマンボウくんがくわえられている置物、三人官女のかぼちゃ猫よりもうちょっと眼光鋭いかぼちゃ猫が、やっぱりサンマさんをくわえている置物。
　そして周囲にマンボウくんがさび猫にくわえられている置物や他の縫いぐるみを色々置いて……。

「ひな祭り、完成だよぉ！」
　瑠樹は元気に言った。
　何だか一気に賑やかになった瑠樹の部屋。縫いぐるみ達も楽しそうだ。
　まちかを撫でつつ瑠樹はひな壇を満足そうにうんうんと眺めていた。

　―――こういうひな祭りも良いよなぁ！