みんなで楽しいひなまつり！｜リアクション

みんなで楽しいひなまつり！

　ひなまつりで賑わう寝子島神社。そこに愛用のデジカメを持って参上した椿美咲紀がいた。
　新聞部の彼女。寝子高新聞にこのイベントの様子を紹介するべく取材に来たのだ。
（寝子高新聞部は常に取材心を忘れないモノなのですよ！）
　意気込む彼女は部員の鑑である。が。
（ひなまつりはおんなのこのお祭りなのです。私も存分に楽しまなくちゃ！）
　……そうだね、楽しまなくちゃいい記事は書けないよね！

　という訳で神社に来たからには最初にお参りしようと、美咲紀は社殿に来た。ごそごそとお財布から出したお賽銭は、５円玉３つの１５円。理由は充分ご縁がありますようにとか、奇数で縁起がよさげとか、３人寄ればホニャラララ……とかいう事らしい。最後は何だか怪しくなっているが。
　兎にも角にも厳かな気持ちでお賽銭を賽銭箱に投げ入れた美咲紀。きちんと手を合わせ頭を下げた。
（カミサマのお蔭で高校１年の生活が楽しかったのです。春からの新生活も沢山楽しい出来事に出会えますように見守っていて下さい）
　しっかりと神様にお祈りすると、美咲紀はすがすがしい気持ちで顔を上げた。すると社殿の建物の中に立派なお雛様が飾ってある事に気が付いた。
「うわー、立派なお雛様なのです！」
　美咲紀は参道を降り、お雛様をよく見ようと社殿を覗き込む。するとすぐ近くでよいしょと背伸びをしながら社殿を覗き込んでいる小さな女の子に気が付いた。
「お雛様が見たいんですかー？　抱っこしましょうか？」
　美咲紀は笑顔で女の子に声をかける。女の子……トワ・E・ライトフェロゥは金色の髪をふわりと浮かせながら振り向き、その青い瞳を瞬かせて言った。
「ダイジョブデスー。ケド、ありがとうゴザイマス！」

＊＊＊＊＊＊＊

「ひなまつりーとは、ネコジマのイツモノイベントデスカネー？」
　少し話して仲良くなった２人。トワは美咲紀に問い掛けた。どうやら、ひなまつりというものを良く分かっていないようだ。
「ううん。ひなまつりは昔からの行事ですよ。こうやって雛飾りを飾って、女の子の成長を祝うのです」
　そう言って美咲紀が社殿の雛飾りを指すと、トワの目が大きくなった。
「oh、これがヒナダン？　デス？　berry beautiful！　キモノ、トワも着てみたいデス」
「お雛様の衣装は綺麗ですよねー」
　うんうんと頷く美咲紀にトワは言った。
「サンニン、カン・ジョー。girlに見えるデスケドー、joe kanという名前の人を３人集めたデス？　それともヒミコーみたいに、選ばれた人がジョーを名乗るマス？」
「え、え？」
　突然三人官女の名前がジョーになってしまい、美咲紀が戸惑う。しかしトワは構わず言葉を続けた。
「ゴニンバヤシーのフエダイコー？　５人がtreeのやくをしつつー、fusion by flute & dramデス？」
「五人囃子が木の役……ですか？！」
「吹きながら叩ける道具とはー日本の脅威の技術力デスネー」
「えっと、ライトフェロゥさん。多分それは違うと思うです。みんな笛や太鼓はそれぞれ持ってますから」
「あ、ちがう？　ソデシタカー」
　そう言いながらもトワは、イマイチ分からないという顔で雛飾りを眺める。
「１番上に載っているのがーヒナさまー。ヒナさまは２人居るデス？」
「あれはお内裏様ですよー」
「あ、もう１人はオダイリ・サマーデスカ」
　美咲紀の言葉にふむふむとトワが頷く。そしてむむ？　と首を捻った。
「オ、ダイリサマーって事は、やっぱりヒナさまが２人いて、も一人のヒナが誘拐されたり毒殺されたり社会的抹殺されそうな時の身代わりだったりするマス？」
「お内裏サマーはお雛様の代理じゃないですよ！」
　段々美咲紀がトワ・ワールドに感化されつつあるようである。その後しばらく掛け合いのように２人は話していたが、美咲紀は他の場所も取材するためトワに手を振って去って行った。

　手を振り返していたトワは、美咲紀が人混みに見えなくなるとその手を下ろし、呟いた。
「wonder Japanese culture.　日本の文化は不思議デスネー」
　結局トワの中でひなまつりはどのように定着したのであろうか。トワは社殿にくるりと背を向けると、弾むように歩き出した。
「トワの家にはまだないデスカラー、帰ったらトワがオヒナサマーを教えるマス！」
　skip skip。
　アマザケー、ヒナアラレーと不思議なフレーズで唱えながら可愛らしい背中がが人混みに消えていく。
　……日本の文化が正しく伝わるのを祈るばかり、である。

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