コロコロ｜リアクション

コロコロ

ダイス　６（ＰＣが何かに追い掛けられる）

『また、ろっこんで自由に飛んでみたい！』
　紙に書いた内容を見て澪乃澄佳は蕩けるような笑みを見せる。
「どうだろうねえ」
　笑顔で枕の下に紙を押し込むのだった。

　空は青く澄んでいる。太陽は天辺に近い位置にあった。
　澄佳は制服姿で学校にいた。人気のない第一グラウンドに立っている。
「誰もいないみたいだねえ」
　のんびりとした口調で見回す。突然に気付いたという風に目を丸くした。
「願いが叶ったんだべか！？」
　空を見上げた。誰かを探すように目を凝らす。一面に広がる青色に黄色い点のような物が見えた。
「んー、なんだべか？」
　眺めていると黄色い点はヒヨコとなった。
「やっぱり、ひよこさん！　前みたいに黒くなくて黄色い子！」
　ヒヨコは澄佳の頭上で円を描くように飛んだ。ピヨピヨと喜んでいるように囀った。
「ふふふ、今回もよろしくねえ」
　声に反応してヒヨコは急降下した。澄佳の頭の上にちょこんと乗ると、小さな羽で叩いた。
「もしかして前とは逆で、ひよこさんが鬼をやりたいってこと？」
　羽ばたきが強くなる。
「ふむむ、それはそれで面白そう！　早速、飛び上がるよう」
　愛用の懐中時計を手にして蓋を開ける。目で時刻を確認すると身体が浮き上がった。『空飛ぶ散歩のお時間です』のろっこんが発動した。
　ヒヨコは頭から離れてくりくりした目で宙に浮かぶ。
「さあ、あたしを捕まえてごらん！」
　強気の言葉で空を飛ぶ。後ろに目をやると黄色いヒヨコが懸命に羽を動かして追ってきた。差は縮まらなかった。
「もっと速く飛ぶからね！」
　南校舎を右手に回り込む。噴水の近くにヒヨコがいた。澄佳を目にした途端、一直線に飛んできた。
「こっちに逃げるもんね」
　横手に飛んで北校舎の中に入った。そこにもヒヨコがいて向かってきた。
「ふへう！？　速すぎない？」
　階段を上に向かって飛ぶと二羽のヒヨコが窓枠に待機していた。
「ひよこさんが、たくさんいる？」
　ヒヨコは一丸となって澄佳を追い掛ける。
　行く先々でヒヨコは増えていく。女子トイレに逃げ込んだが、そこにもいた。
「なしてなのさ！」
　慌てて逃げ出した。ヒヨコは追撃の手を休めない。どんどんと数を増やし、黄色い波となって押し寄せる。
「お、おかしいよう！　黄色い津波だよう！」
　急いで校舎の窓を開けて澄佳は外へと逃れた。ヒヨコは黄色い竜巻と化して上空まで追ってくる。
「そ、そんなにいなくたっていいしょやあ！」
　全力の飛行を嘲笑うようにヒヨコが迫ってきた。焦った表情で下を見れば、校舎は巨大なヒヨコに変身した。一回の羽ばたきで空を飛び、暴風を纏って猛追を開始した。
　澄佳は手足をばたつかせて必死になって逃げる。
「いやああ、追ってこないでえええ！」
　その願いは叶わず、巨大な怪鳥はけたたましい声で鳴いた。

　荒い息で澄佳は目覚めた。夢の中から逃げ切り、現実に戻ってきた。仰向けの状態で額の汗を手の甲で拭った。
「ろっこんで自由に飛べたのはいいのだけど」
　ゆっくりと上体を起こした。腰を回すような動きのあと、念入りに肩を揉んだ。
「こんなに疲れるもんなんだねえ、ふへううう」
　スズメの囀りが聞こえた。ビクッと肩を上げて前に倒れ込んだ。
「スズメは、ひよこさんではないよう」
　軽いトラウマになっているようであった。

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あとがき

担当マスター：黒羽カラス
ファンレターはマスターページから！

今回のシナリオはいかがでしたでしょうか。
サイコロの気紛れで、大変な思いをしたＰＣさんがたくさんいました。
世界は広いです。あのような食べ物が存在していたなんて！　軽い眩暈に襲われました。

これも運なのでしょうか。全てのサイコロの目が出ました！
おかげでバラエティーに富んだリアクションになったと思います。
書き終わったあとで気付いた、少し鈍い私です。

今回も本当にありがとうございました。
皆さんのご協力もあり、楽しく執筆ができました。
また、一緒に楽しみましょう！

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