けものの訪問者たち｜リアクション

けものの訪問者たち

【状況開始！　ワニとパンダを説得しようぜ！】

「僕たちは探してるんだよ。僕たちの世界を救ってくれる人がこの寝子島にいるはずだからね……あ。もしかしてキミかな？　キミは何ができる？　キミはイケメンだよね？　今声をかけてくれたもんね。絶対キミだよね。そうでしょ。そうなんでしょ？　お願いだよ。助けてよ！」
「は……、えっと……？」
　ワニの饒舌トークに恵御納夏朝は戸惑う。
　ただでさえ、一般の人々が興味を示し、フツウが壊れちゃいそうなこの状況である。
　それなのにもかかわらず、このワニが混乱させるようなことを言い、ぐるぐると夏朝の頭は混乱する。
　そうしているうちに近づくののこの声、突如消えたテオ。
　だが、そんな中、　ハッと何事かを思いつく夏朝。
（……そうだ、ごまかそう！　アマチュア映画って事にして……！　でも、一人だけじゃ説得力が足りない）
　そういって、あたりを見回すと、夏朝の視界にこの事態に気付いた仲間が目に入る。
「ちょっと！　どうして外に出たの？！　まだ映画は打合せと衣装作成段階だよ！？」
　少しわざとらしいが、突如声を上げた夏朝。
　そして、ワニとパンダが何か声を上げる前に近づいてささやいた。
「ごめん、説明は後で……今は映画絡みって事でお願い！」
　小さくとも、はっきりと耳元で伝える。
　若干身長差はあれど、夏朝が巻き込むようにして言えば、ワニとパンダはパチクリと目を瞬いた。
　その時、別の場所から声が響く。
「あ、ちょっと着ぐるみを着たまま外に出るなんて、どういうことよ！　こんな格好でほっつき歩いて！　人が驚いちゃうじゃない！」
　カメラを片手に、青山絢がパンダの後ろから怒ったように迫る。
　夏朝と少しだけアイコンタクトすると、わかってると目で伝える。
　どうやら、絢は着ぐるみを着たまま街をほっつき歩いている二人を連れ戻しに来た、という演出を手伝ってくれるようだ。
　その目線と行動で理解した夏朝は、きょろきょろと何か乗り物を探すが見つからない。
　ののこもごまかさなければいけないが、そこに救いが入った。
「あ、五組のののこちゃんだよね？　丁度よかった。今からパフォーマンスをするから見て行ってよ～」
　のんびりとした声で、ののこの前に現れたのは伊藤佳奈である。
「え、こんなところでイベントが？　知らなかった！」
　だが、ののこがよけいなことを言う。
「え、イベント？」「確かに、聞いてない」「こりゃ、警察に」
　騒ぐフツウの人たち。
「ちょっと！　サプライズイベントの出演者なのに、これじゃ全然サプライズじゃない！」
「ちょいと、いやそんなこと言われてもイケメン……」
　絢の援護射撃に、驚くワニ。一瞬ごまかせそうだったが、ののこという想定外で騒ぎは大きくなりそうなそんなとき、すべてをかき消すようにデスメタルが鳴り響いた。
「あ、すいません、音だします～！」
　町の一角で鳴り響いたデスメタル。それを鳴らしたのは新田亮であった。
　なんというか、だんだんカオスになっている。
　そんな亮は、パーカーを目深にかぶり、何やら妙な踊りを披露する。
「……えっと、とりあえず、移動しよう？」
　デスメタルをおとりにしつつ、ワニは夏朝が抱え、絢はパンダの手を引いて、その場を離れようとする。
「すごーい！　動物が動いてる着ぐるみショーだ！　あれ、どこ行くの？」
　とはしゃぐののこの声を聴きながら、また、余計なことを言ったののこに対して思案を巡らせる。
　果たして、この事態はどうなるのか？
「ちょっとまった！　なのだ」
　さらなる波乱が来た。その名は後木真央といった。

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