けものの訪問者たち｜リアクション

けものの訪問者たち

【そして、変わりゆく世界】

　刀と円は駅付近を捜索していたが、手掛かりはなかった。
　時間が流れていく中、修から刀に連絡が入り、しばらくのやりとりののち、円へと同じ事が刀から伝えられる。
「なるほどね」
「だいたい、とすると、あとは駅を調べればいいわけだ」
　頷く円に感心する刀。
　だが、円は考え込んでいる。
「……入れ替わりで、テオとワニ&パンダが転移しちゃったとしたら、空間が切断されて隔離されないのも納得できるのだけど」
「……また、何か気づいたのか？」
　問いかける刀。
「……電車か駅のホームを探してみよう」
「お、おう。駅から出てくる前の様子を聞いたから、どこかでヒントを得られるかもしれないしな！」
　そういって二人は駅の入場券を買って、ホームへと入る。
「テ、テオー！　どこー！　すいません、猫探してるんですけどみませんでしたかー？」
　駅員に聞いたりする円。
「む、効果が……」
「その前に、下手にろっこんを使わないほうが」
「それもそうだな」
　刀はろっこん【加速】を使い、全力で駆け出して大声でテオの名を叫びながら探そうとしたが、止められる。
　だが、見つからない。
「……」
「見つからないな」
　二人は駅のベンチに座り込み、ただ電車が来るのを眺めている。
「ねぇ」
「どうした？」
　その時、ふいに円が言う。ただ、顔が若干青い。
　円の雰囲気に刀は一瞬飲まれたかのように、見入る。
「もし、もしだけど。さっきろっこんが使えないかもって言ったよね」
「あ、ああ」
　刀が驚いたように言う。
「……使える？　ろっこん？」
「……効果が薄いだけで、って何するつもりだ」
　立ち上がる円に、慌てて刀はついていく。
「きっと、あのワニもパンダも今みたいに必死に救世主を探した状況なんだよね？　ということは、今の状況と似ているようにも、思えるんだよね。強引だけど」
「お、おいよせ！」
（いざとなれば桜庭ー！　と桜庭抱えて空から落ちる！　と思っていたが……まさか）
「もし、ダメだったらののこちゃんに、メールのやつ伝えといて！　ちょっとテオを迎えに行ってくる！」
　そういって、円はかける。
　隙間を縫うように、一瞬で、かつ、その瞬間まで気づいてくれるなフツウの人と祈りながら、電車がホームに滑り込む時、その前へと。
「……お、おい？」
　こうして、桜庭円は戻らぬ人とは……ならなかった。
　刀は見た。反対側のホームで桜庭がテオを抱えて立っていた。
「……さぁ、事情を聞かせてもらおうか？」
「お前もだろぉぉぉぉぉ！」
　円への刀の突っ込みが空に響いた。

「……ところで、テオって救世主なの？」
　円が事情を説明し、不思議そうに聞く。
「たしかに俺かもしれん。そうか、ケモジマか……」
　テオがそうつぶやく。
「テオが救世主？」
　刀が信じられるようで、信じられないと複雑な表情で首を振る。

　……そのあとどうなったかは、別の話である。

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