けものの訪問者たち｜リアクション

けものの訪問者たち

【割り込む者たち！　ワニとパンダを移動させようぜ！】
　　
　後木真央は、亮がデスメタルで注目を集めたのを見て、さらなるカオスを呼び寄せるために来た。
「人は見たい物しか見られず記憶にも留めておけないのだ。つまり更なるカオスに叩き込めば押しなべて森の中なのだ！　真央ちゃんあったまいー」
　などど、供述しつつ夏朝と絢が連れているワニとパンダの前へと立ちはだかる。
「あ、なんかさらなる予感」
　面白がるののこをよそに、真央は突如言い放つ。
「そこの男前なパンダとワニのお二人さんちょぉっといいですかぁ？　なのだ～」
「おぉ、なんだろうか？　かわいいお嬢さん」
「……ふむ」
　小さいワニが、しゃべる。パンダは小さく頷いた。
「ちょっと……」
（……え？　このワニとパンダ、本当にしゃべれるの？　半分わからずに入ったけど何としても止めなきゃ）
　慌てて絢が止めようとするが、真央は言い放ってしまう。
「つまり、木を隠すなら森の中、非日常は日常の中に埋め込めば全然目立たないのだ！　パンダさんもワニさんもやりたいことがあって来たなら、堂々街の中を歩けるようにすればムグググ」
　えへん、と真央は胸を張りつつ、言おうとするが、突如口をふさがれる。
「はい、ストップ～」
　ひょいと、気楽に表れたのは桜庭円。
「むがむぐ（サンマさんやマンボウさんに続く第3、第4の寝子島キャラクターということにすれば大手を振って歩けるのだ！　だってこれから人や物を探すなら彼らが街を歩けるようにしなきゃダメなのだ！）」
「わかるけど、それを大声で言うのが、聞こえちゃうよ。ふんどしもダメ」
　やんわりと、真央を抑えつつ、しっと手を振る。
　夏朝と絢は顔を見合わせると、そのままワニとパンダを連れて行こうとする。
　先ほどから幾度となく挑戦しているこの連れ出すという行為は、もはやカオスになったこの状況からすれば、意味を成すのか不明だが、フツウを守るという一種の機密から考えれば、安全を優先する意味で、場所を変えねば話は進まない。
　さきほどから、ののこの発言も妙に妨害めいている感じもしなくはないが、悪気はないのだ。
　佳奈があれこれと誘導しているが、なかなかうまくいっていない。
　だが、そんなののこを抑える存在が現れる。
「こんにちは野々さん、珍しい所で会うね！」
　そんなののこに話しかけたのは、佐藤英二である。
　ちょうど、ぬいぐるみたちから遮る形で自然に立ちはだかる。
　また、デスメタルの踊りにフツウの人々は気を取られ、動物たちをうやむやに連れていける状況へと移行しつつある。
　「こっちだ！」
　そんな時、事態を聞きつけた八神修がワゴンに乗ってやってきた。
　どうやら、実家のものらしいが、今はそれを細かく考えている場合ではない。
「撤収しまーす！」
「すいません、そのうち公開される映画『獣とのアバンチュール』をよろしくー！」
　どちらが、どちらの言葉を言ったのか……。
　なお、アバンチュールはフランス語で恋とか火遊びとか言うらしいけど、だれも細かいことは気にしなかった。
　が、夏朝と絢の行動は少なくとも初期行動としては間違ってなかったのであった。

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