【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞

●夕刻、男たちは

　ボクシング部の部室で、体力を使い切った新田亮は床に大の字に寝そべっていた。
　試験後の鬱憤も消え、心地よい疲労感に包まれている。
　牛瀬巧先生が亮の顔を上から覗き込んだ。
「久々やったけど、どやった？」
「１週間休むと体って重くなりますね」
「そやろ」
「でも……スッキリした！」
　そらよかったわ、と牛瀬は笑った。先生も久々に汗を流して気持ちよさそうだった。
　亮の顔には自然な笑みが浮かんでいる。
　心は、春の空のように澄み渡っていた。

◇

　さて、寝子高生徒会長であり、心配性なお兄ちゃんでもある志波武道は、下宿先の米屋『美咲』に直帰した。部屋に戻って着替えをすると、早速、『試験にここが出たメモ』を鞄から取り出す。
「今回、ちょっと前回に比べて不安が残るんだよな……今確認したら、テスト返却までかなりドキドキしなきゃならないってのはわかってるけど……覚えているうちに！」
　本格的な復習はテストが帰ってきてからだけど、まずは出た所の確認と大まかな見直しをやってしまうことにする。――テストが終わった直後なのに！
「たー坊の方はどうしたかなあ」
　心配性な兄貴はまず、弟の拓郎のことを案じた。
「もう少し頑張りましょうな点はあるだろうが、テスト前にいろいろメールしたのをちゃんとやってくれてたら多分心配ないだろうし……」
　桜花寮住まいの弟はちゃんとやった。
　なんだかんだ言いつつも律儀に兄のアドバイスに従って、朝型にしたりお茶を飲んだりして頑張っていた。
　確認したわけじゃないが、弟ならそうするだろうな、というのは兄なのでわかる。
「心配があるとしたら俺のほうだ」
　部活楽しい。バイト楽しい。生徒会楽しい。たー坊にあれこれするの楽しい。皆と遊ぶの楽しい！
「だが、それで学生の本業である点数が落ち込んでたらシャレにならないぞ……っと」
　もともと、そんなに成績が悪い方ではない。全科目８０点以上を取るくらいの実力はある。今回も数学・社会・体育は大丈夫だろう。逆に不安な科目は国語と家庭科なので、それらの教科書を開いて、自分の回答で合っていたかを確認する。
　で、結論。
「～～～～っ、これ、割とギリギリ……目標点に達しないんじゃないか？」
　流石に解釈記述問題に関しては、センセの判定に祈るしかないが……。

　帰ってるの？　と部屋の外から若奥様の声がする。
　ごはんになるわよ。試験終わったんでしょう、今日は奮発して葡萄も買ったのよ、と若奥様は言う。はやくいらっしゃい、と。
「ハーイ。いま行きまっス☆」
　いつもと同じを装って返事したつもりだったが、声が若干上ずった。
　内心かなり動揺しているお兄ちゃんです。

「ああ～～～～っ、テスト返却がコワイよう」