- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞
●試験当日２日目～美術
美術の試験がはじまった。試験監督として生徒たちの様子を見ていた泉先生は、幾人かの生徒がちらちらとののこの方へ心配そうな視線を送っていることに気づく。
（……やっぱりほら、ののちゃんのテスト結果はすごく気になる）
ののこが真面目に答案に向かっている姿を視界の端で感じながら、夢宮 瑠奈は自分の答案に答えを書き入れる。アイドル活動で学校への登校が飛び飛びなることも多く、自分もあまりいい感じの結果が出せないような気がするだけに、テスト前で慌てていたののこのことが気になるのだ。
あたしにとって学校って何かなって、時々思う。
パパが家にいないから、何かしなくちゃって飛び出して、寝子高に入学したのがもう一年近く前のことで。
そこからしばらくして６月、憧れだったママのいた場所、芸能界に飛び込んで。
あたしはまだ一地方のロコドルだけど、時々変わったお仕事をもらうし、それに精一杯応えているし。
だから別に、寝子高にいなくても、なんとかなるし。
でも。
（やっぱり学校でないと体験できないことってたくさんあると思うから、あたしはここが気に入っているから、だから……）
自動筆記みたいに手を動かしながら、頭の中ではそんなことをぐるぐると考えている。
気に入っていることの一つは、やはり友だちの存在だろうと思う。
ののこもそうだし、桜花寮のルームメイトである七音侑もそう。１年７組のクラスメイトたちもそうだし、軽音部の仲間たちもそう。ともだちが留年するのは悲しいし、残念だと思ったりするし……そんなふうに心動く友と出逢えたことは、学校で得た素敵なことの一つだと思う。
（ののちゃんも侑ちゃんも、皆皆、一緒に進んでいきたいと思うから）
だから瑠奈も。
こうしてがんばっていこうとおもうのだ。
同じようにののこへ視線を送る女生徒がもう一人いる。
旅鴉 月詠である。もっとも、彼女の視線の色は瑠奈と違って、ののこを気に掛ける友人というよりは巣立ちを見守る親鳥のようであった。
（美術知識をできるだけわかりやすく教えたつもりだが、どうかな）
月詠が見たところ、ののこは実技のセンスは十分だ。道具の使い方はなってないところがあるがそこはご愛敬、知識さえつければののこも芸術家の片鱗を発現するんじゃないかと思っている。
勉強と思わない事。詰め込むだけではない事。それが物事を楽しむコツだ。
知識を得る事が楽しいと思えるようになればしめたもの。
（好きなことで遊ぶ感覚になれば試験すらも楽しくなる。苦手分野は勿論あるんだけどね）
美術は得意科目なので、満点を取りたいと思っているし、筆記問題を見直したところ問題なさそうに思える。
となればいざ、答案の一番最後にある大きな空白、デッサン問題だ。
円錐と球を光源を意識して描く、という月詠にとっては決して難しくない問題。形が描けていて、左上に設定された光源に対して影が正しく描けていれば満点というものだろう。だが、シンプルなテーマだからこそ、描きがいがある。配置、大きさ、つるりと白磁のような手触りが分かるような質感。そんな部分に拘って描く。
（円錐と球か……円錐が攻め？ いやいや球の方がカンペキ感があるから受けと見せかけて実は……）
相変わらずのＢＬ妄想に浸るのは響 タルト。
タルトもまた、時折ののこの方を見ては、
（ポイントは教えてあげたけど、うまくいってるかな？）
と気にしている。せめて、『円錐』がどんな形のことを示すか、分かっているといいのだけれど。
（やっぱり留年はフツウのことじゃないと思うし……はっ！ もしかしてののこちゃんが留年したらフツウを守るため「サ○エさん時空」が発動してみんな進級できないんじゃ？ そんなことになったら僕たちのこれからがピンチだよ！）
漫画やアニメみたいに、時間は流れているのに年を取らなくなったらどうしよう！
（……って妄想に耽ってる場合じゃなかったね。成績がピンチにならないよう頑張るぞ！）
泉先生が回ってくる。
月詠は答案の端に手のひらをのせ、何食わぬ顔で見直しをしているふりをする。
先生が通り過ぎると、手のひらをそっと避けた。
そこには、ひょうきんなデフォルメをされた泉先生のらくがきがあった。
（テスト中の楽しみといえば問題を全て解き終わった時の余白時間だ。見直しが終わったら余白には絵を描こうと決めているのだ。……にしても。今回の美術のテストは余白が少ないな。私を見越して対策してきたとしか思えない答案デザイン。おのれ泉先生、私の密かな楽しみを）
そこまで考えでくつくつと肩で笑う。冗談だ。らくがきする生徒を見越したわけじゃあなかろう。
泉先生なら、生徒のらくがきも楽しみにしていそうだもの。
泉先生の隣に、フジコ先生のデフォルメ画も描き添える。それ以上の余白はない。いや、なくはないのだが、名前の上や左右の余白にこれ以上描いたら美しくない。
（しからばとても良いデッサンを描くしかねぇということだな。仕方ないしかたない。我が担任が一目で納得する絵を描き上げよう）
月詠はデッサンの円錐と球を矯めつ眇めつし、鉛筆を寝かせるようにして質感をさらに仕上げていった。
美術の試験がはじまった。試験監督として生徒たちの様子を見ていた泉先生は、幾人かの生徒がちらちらとののこの方へ心配そうな視線を送っていることに気づく。
（……やっぱりほら、ののちゃんのテスト結果はすごく気になる）
ののこが真面目に答案に向かっている姿を視界の端で感じながら、夢宮 瑠奈は自分の答案に答えを書き入れる。アイドル活動で学校への登校が飛び飛びなることも多く、自分もあまりいい感じの結果が出せないような気がするだけに、テスト前で慌てていたののこのことが気になるのだ。
あたしにとって学校って何かなって、時々思う。
パパが家にいないから、何かしなくちゃって飛び出して、寝子高に入学したのがもう一年近く前のことで。
そこからしばらくして６月、憧れだったママのいた場所、芸能界に飛び込んで。
あたしはまだ一地方のロコドルだけど、時々変わったお仕事をもらうし、それに精一杯応えているし。
だから別に、寝子高にいなくても、なんとかなるし。
でも。
（やっぱり学校でないと体験できないことってたくさんあると思うから、あたしはここが気に入っているから、だから……）
自動筆記みたいに手を動かしながら、頭の中ではそんなことをぐるぐると考えている。
気に入っていることの一つは、やはり友だちの存在だろうと思う。
ののこもそうだし、桜花寮のルームメイトである七音侑もそう。１年７組のクラスメイトたちもそうだし、軽音部の仲間たちもそう。ともだちが留年するのは悲しいし、残念だと思ったりするし……そんなふうに心動く友と出逢えたことは、学校で得た素敵なことの一つだと思う。
（ののちゃんも侑ちゃんも、皆皆、一緒に進んでいきたいと思うから）
だから瑠奈も。
こうしてがんばっていこうとおもうのだ。
同じようにののこへ視線を送る女生徒がもう一人いる。
旅鴉 月詠である。もっとも、彼女の視線の色は瑠奈と違って、ののこを気に掛ける友人というよりは巣立ちを見守る親鳥のようであった。
（美術知識をできるだけわかりやすく教えたつもりだが、どうかな）
月詠が見たところ、ののこは実技のセンスは十分だ。道具の使い方はなってないところがあるがそこはご愛敬、知識さえつければののこも芸術家の片鱗を発現するんじゃないかと思っている。
勉強と思わない事。詰め込むだけではない事。それが物事を楽しむコツだ。
知識を得る事が楽しいと思えるようになればしめたもの。
（好きなことで遊ぶ感覚になれば試験すらも楽しくなる。苦手分野は勿論あるんだけどね）
美術は得意科目なので、満点を取りたいと思っているし、筆記問題を見直したところ問題なさそうに思える。
となればいざ、答案の一番最後にある大きな空白、デッサン問題だ。
円錐と球を光源を意識して描く、という月詠にとっては決して難しくない問題。形が描けていて、左上に設定された光源に対して影が正しく描けていれば満点というものだろう。だが、シンプルなテーマだからこそ、描きがいがある。配置、大きさ、つるりと白磁のような手触りが分かるような質感。そんな部分に拘って描く。
（円錐と球か……円錐が攻め？ いやいや球の方がカンペキ感があるから受けと見せかけて実は……）
相変わらずのＢＬ妄想に浸るのは響 タルト。
タルトもまた、時折ののこの方を見ては、
（ポイントは教えてあげたけど、うまくいってるかな？）
と気にしている。せめて、『円錐』がどんな形のことを示すか、分かっているといいのだけれど。
（やっぱり留年はフツウのことじゃないと思うし……はっ！ もしかしてののこちゃんが留年したらフツウを守るため「サ○エさん時空」が発動してみんな進級できないんじゃ？ そんなことになったら僕たちのこれからがピンチだよ！）
漫画やアニメみたいに、時間は流れているのに年を取らなくなったらどうしよう！
（……って妄想に耽ってる場合じゃなかったね。成績がピンチにならないよう頑張るぞ！）
泉先生が回ってくる。
月詠は答案の端に手のひらをのせ、何食わぬ顔で見直しをしているふりをする。
先生が通り過ぎると、手のひらをそっと避けた。
そこには、ひょうきんなデフォルメをされた泉先生のらくがきがあった。
（テスト中の楽しみといえば問題を全て解き終わった時の余白時間だ。見直しが終わったら余白には絵を描こうと決めているのだ。……にしても。今回の美術のテストは余白が少ないな。私を見越して対策してきたとしか思えない答案デザイン。おのれ泉先生、私の密かな楽しみを）
そこまで考えでくつくつと肩で笑う。冗談だ。らくがきする生徒を見越したわけじゃあなかろう。
泉先生なら、生徒のらくがきも楽しみにしていそうだもの。
泉先生の隣に、フジコ先生のデフォルメ画も描き添える。それ以上の余白はない。いや、なくはないのだが、名前の上や左右の余白にこれ以上描いたら美しくない。
（しからばとても良いデッサンを描くしかねぇということだな。仕方ないしかたない。我が担任が一目で納得する絵を描き上げよう）
月詠はデッサンの円錐と球を矯めつ眇めつし、鉛筆を寝かせるようにして質感をさらに仕上げていった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2017年01月01日
- 参加申し込みの期限
-
- 2017年01月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2017年01月08日 11時00分
