【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞

●試験当日２日目～社会

（ふつうのテストっていいよね）
　多喜勇生は心からそう思う。
　いつも神魂の影響やらなんやらで落ち着かない試験期間だが、今回は特に問題が起こることなく２日目社会に突入している。
　社会は前回低かったので、今回とくに気合が入っている。まずは問題をざっと見て、判る場所から先に埋める。それから時間の許す限り考えて、判らない場所も埋める作戦だ。試験監督の泉先生とフジコ先生が代わる代わる回ってくるが、勇生は集中を途切らせることなく問題を解いてゆく。

　一方、手を動かす合間に、ちら、とフジコ先生の方を覗き見るのは、響タルトである。
（前はノリでカンニングしたけど、さすがにフジコ先生相手じゃなあ……）
　ノリというか神魂的なエアーのせいもあったが、今回は面白さとフジコ先生のお仕置きを天秤にかけて、お仕置きコワイになったらしい。
（取り押さえられて首輪つけられて犬にされちゃうとか、肉体的にも精神的にもキツイお仕置きが待ってそう。何より、僕フジコ先生好きだし先生が悲しむ顔は見たくないもの）
　それよりなにより、１年最後のテストである。
（たまには本気を出すよ。勉強も頑張ったし）

　そうこうするうち、勇生の解答欄がだいたい埋まってきた。
（いつになく順調だ……今回のテストの時間は本当に静かだなぁ）
　脳内がクリアなのが自分でもわかる。それもこれも、過去のテストで常に変な現象が起きていたことに学んで、テスト中に変なことが起きても気にしないように集中力も鍛えてきたおかげかもしれない。
　勇生は怪しまれない程度にあたりを見、耳を澄ましてみた。
　聞こえるのはカリカリと問題用紙に文字が書かれてゆく音。
　泉先生の落ち着いた足音と、フジコ先生の熱い吐息――、
（……は通常運転か。いや今回は本当に何も起きてないっぽいね）
　うーん、ずっとこうだったらいいのにな～、と思う。
（超常現象に邪魔されて悪い点取ったとか信じてもらえないもんなぁ。これなら実力が発揮出るし、テストの点も実力だって思えるもん）
　改めて問題用紙に目を落す。
　人名、ＯＫ。年号、ＯＫ。長文の穴埋め、まあまあＯＫ。
　設問を読んで文章で答えよ、のところがまだ空欄だったので、改めて読み直し、自信半分ながらも埋める。
（……さてと、もう１回見直しておこうかな）
　フジコ先生は誰かにフジコブレスを吹きかける機会はないかとじれったそうにしているが、さすがに学年末試験は落とせないと、みな真面目に受けているようで、襲われる人も連行される人もいない。こうして勇生はトラブルに巻き込まれることなく、何にも起きないふつうのテスト時間を満喫できたのであった。