推理ゲーム『ねこじま人狼』3rd｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』3rd

●　議論タイム

「志波先輩だ」
「う、う……つらいわぁ！　サキリ君に疑われてるなんて！」
　指で小刻みに机を叩きながら嘆く武道。
　サキリはそんな武道に、容赦なく、見えないナイフを突きつける。
「占い師が２名出てからの騙り占い師で牽制作戦は遅すぎて不自然。仮に新江が狼側だとしても、鉄板の島民潜伏を捨ててまで騎士騙りをするのは分が悪い。という訳で――」
　サキリは突きつけていた見えないナイフを武道の心臓に投げつけるかのように腕を振るう。
「僕の吊り希望は志波先輩。二度目の吊りは同じ組からの八重崎先輩だ」
　武道は「うう」と心臓を押さえるふりをした。

　そこで五郎八が、相も変わらずの飄々とした微笑みでサキリに尋ねた。
「同じ組ってことなら梢ちゃんもいるよね？　梢ちゃんじゃなく私な理由、聞いておきたいな」
「屋敷野に対して疑念はあったけど、トワの僕に対する疑念を利用する事なく、あっさり島民と認めた事は狼側らしくない。逆に八重崎先輩は主張が適当すぎて怪しいな」
「主張が適当、か。ま、折角なら変な事してみたかったのも否定しないけど！」
　五郎八はぺろりと舌を出す。

　サキリは冷静に尋ね返した。
「八重崎先輩のご意見は？」
「私？　んー、占い騎士は……怪しいけど決定的差異は感じないし一先ず保留で、消去法で現状私が投票するなら梢ちゃんかな」
「それは何故？」
「梢ちゃんぶっちゃけ、ものまねの動きなんだよね……騙るとして村に比較的負担掛けない位置となると、私ならパン屋騙る。対抗の楢木君に『本物』発言だし実質ものまねカミングアウトかなって。ただ、主張が露骨だから装ってる臭もあるね。だから……怪しいっていうか、気になるってかんじ」
「いやー狂人カミングアウトのほうが絶対気になりますってー」
　梢は苦笑した。

「俺はモンスター五郎八さんを吊りたいな」と衛。
「目に見える地雷だし、実際吊り回避してるようにも見えるし」
「だよなー。個人的には賭けに出る前に、狂人主張な八重崎先輩を吊って、人外サイドを減らしてっつーのもアリじゃねぇかなーって思ってるぜ」
　春彦も賛同する。
　さらに流も。
「俺も現時点では八重崎吊りを推したい。理由は『狂人を騙るものまね師』に見せかけた人狼の可能性と、実は八重崎こそがパン屋で、吊られる事で、楢木パン屋とそれに続いた屋敷野のパン屋風ものまね師を暴くトラップを狙ってる可能性……を考えてだ」

　トワはいくつめかのカップケーキに口をつけたまま静止していた。
「Uhm, 今のところイロハが怪しい思うマスが……ワタシはらっかみってヒト、ほんとにいないデス？」
　全員を見渡すが、誰からも返事はない。
「ここまで来て誰も名乗り出ないってことは、らっかみが欠け役職の確率はかなり高い、デスネ。そうなるとほぼ確定で人外サイドになる占い師と騎士の真偽が怪しくなるので、崩すならそこからデス？」
　それに対し、「占い師から崩したい」という天懸と、「占いは２日目に持ち越しで情報増えてから決めうちがいい」という衛の意見がぶつかる。
　
「屋敷野と志波先輩の意見は？」
　サキリが尋ねると、ふたりはそれぞれに天懸を見た。
「俺は天懸君が怪しいと思う」
「私も。でも、いろいろ話を聞いたので、考える時間が欲しいですねー。吊るのは『同じ職集中狙い』がいいかなーと思ったりしてますが、まあ２日目とか占い絶対カオスですよね……」
「新江は？」
　サキリが尋ねる。
　天懸はやや余裕を取り戻したようで、足を組んで鼻歌を歌っていた。
「俺としては依然、志波先輩が怪しいと言わざるを得ない。俺の意見と防衛方針はさっき述べた通り。真占い護衛が目的だが、一方で、３人いる占い師から人狼を引く可能性に賭けたいとも思っている」
「俺としては天懸くんこそが人狼な気がするけどな？」
　武道と天懸の間に、ふたたび火花が散りかけるのを、アカリが制した。
「新江……志波先輩……もし本当に騎士なら、俺のこと、守ってくださいね？」