【星幽塔】第一階層　ほしびとと共に、或いは、塔と愉快な仲間達｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ほしびとと共に、或いは、塔と愉快な仲間達

【その赤子、九二四歳】

　しばらくの間、薄野五月はジュリアーノ・バッジョのほっぺの感触を堪能していた。

「ふぅっ。満足しました」

　ひとしきり触った後、五月は満足げに息を吐いて言った。
「ふぅ、やっと終わったか。もれいびさん。すまんが、わしにミルクをくれんかのう？　ちょうど切らしておってのう」
「え？　ミルク？」
　五月が思わずそう聞き返す。赤ん坊にミルクがないのは一大事だ。
「わかりました。何とかしましょう。ミルクはどこで買えますか？」
「……どこじゃったかのう？　ほれ、あそこじゃよあそこ」
「え、ちょっとわからないのですが……」
　すっかり五月が困り果てた、まさにそのとき――。

「あら～？　誰かと思えばジュリちゃんじゃない！」

　いきなり目の前にビキニ姿の女が姿を現した。
「……おっ、おぬしはマリリン！？」
　その姿に、ジュリアーノは熊にでも遭ったような顔をする。
「……お知り合いですか？」
　と、五月が訊ねるよりも早く、

「って、あら～？　そっちにいるのは、サクラちゃんじゃな～い～？」

「え……？」
　マリリンは次なる獲物を見つけ、ダイナマイトに五月の向こう側にいる少女目掛けて走っていった。

【ダイナマイトばあさん再び】

　その日、水上桜は城下町を散策していた。
　そして、
（……何かしら？　今、何かろくでもないことに巻き込まれそうな予感が……）
　あるとき、不意にそんな予感が頭を過ぎり、引き返すべきか迷った。
　が、ここで桜の負けず嫌いの血が騒いだ。

（……大丈夫。私はあのシャウラの泉からも生きて帰ったじゃない！）
　胸中で呟いて、桜は勇気を振り絞るように歩を進め――

「あら～？　今度はサクラちゃんじゃなーい。ひっさしぶり～♪」
「……！？」

　そこで彼女は遭ってしまった。ある意味シャウラタイガーよりも恐ろしい珍獣（？）――マリリン・ダイナマイトに。
「やっだ奇っ遇～♪　ね、元気だった～？」
「え、ええ……。そちらも元気そうでなにより……」
　まるで十年来の親友のような気安さで話しかけてくるマリリンに、桜は乾いた苦笑混じりにそう返すしかなかった。
「ちょうどよかったぁ♪　今、そこで幼馴染を見つけたの♪　一緒に遊びましょ♪　うん、決まり♪」
「ええ～……」
　桜はもの凄くイヤそうに言ったが、マリリンは聞いてなかった。
　勇気と無謀は似て非なるもの。それを身を持って実感した、水上桜１５歳のある日の出来事だった。

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