増えるまたたびメイトの謎｜リアクション

増えるまたたびメイトの謎

「確かに、『もれいび』は……俺の経験からしてだけど、人に比べて若干体が丈夫になっている気がする。けど、このままでは先輩の体は疲れる一方だし、その上またたびメイトも落ち続ける。何かしらのトラブルも起こりうるかもしれない」
　刀がどう説明しようか悩みつつ言葉にしていると、修がフォローするように提案する。
「先輩の場合は、体から発せられるSOSだと考えたほうがいい。……そうだな、どうしたらいいか、みんなで考えてみるのはどうだろう？」
「それはいいアイデアだと思いますっ」
　牡丹がぽん、と手を打って賛成する。確かに、弥栄の場合は疲れない工夫ができればろっこんをコントロールできる。他の面々もこの提案には賛成のようだった。最初のうちは困惑気味だった弥栄であったが、なんとなく解り始めていたような様子だった。彼はまじまじと自分のポケットからでたまたたびメイトを見、小さく呟く。
「こういう力って……あるものなんですねぇ」
　漸く『もれいび』としての自覚が芽生え始めた弥栄に、真央がにまっ、と笑いかける。
「なんだか、救世主レベル１って感じで格好いいのだー♪　またたびメイトがあるなら、お腹が空いてる人を助けられるのだ！」
　そう言われ、弥栄は少し恥ずかしそうに笑っていると、円がノートを取り出す。そこに一日の行動を図にしてもらおう、というのだ。「絵は苦手だなぁ」といいつつも弥栄がノートを受け取った時、声をかける者がいた。

「ねぇ、牛乳配達ってハードなの？」
「あ、あまくんも来てたんだねぇ」
　伸幸が、友人である天野に声をかけると「まぁね」と苦笑する。そして、彼は弥栄の前にやってくる。
「ちょうどアルバイトを探していた所なんだ。よかったら、手伝おうか？」
「！　いいんですか？」
　天野の言葉に表情を明るくする弥栄。天野はいつもの調子で「君の為じゃないし」と、軽く肩をすくめる。が、こうも言葉を続ける。
「まぁ、僕は得するし、君は楽になる、という意味では悪くないかな、と思うんだよね」
「お父さんも、喜ぶんじゃないかな？　人手が足りないみたいだし」
　翡翠が明るい表情でそういえば、弥栄も感謝しつつ頷いた。その笑顔をみつつ天野は内心でぽつり、呟く。
（島のあちこちを歩けるし、調べるにも丁度いいからね）

　天野の提案に喜ぶ一方、よく考えてみたらまだ根本的な解決方法はぼんやりとしか定まっていない事に全員気づく。
「ぬーん、兎も角、なんとかしなくちゃ、いけないねぇ」
「リラックスできる方法とか、模索してみるのも手じゃないかな」
　伸幸の呟きに、円がぽん、と手を打って提案する。それを切欠に、意見がぽんぽんと飛び交ったのだった。