増えるまたたびメイトの謎｜リアクション

増えるまたたびメイトの謎

急：のんびりと、息抜きを

　――北校舎１階・保健室：放課後。

　最初、弥栄は添木牡丹に提案され、足つぼマッサージをしてもらう事になった。医療系の道に進もうと考えている牡丹は、こういう事にも詳しいのだ。
　彼女は丁寧な仕草で湧泉（足の裏、足の指を曲げるとへこむ箇所にあるツボ）を刺激し、弥栄の顔を見る。
「痛くありませんか？」
「くぅっ……、なかなかきますね」
　弥栄の痛そうな表情から、少し力を抜いて、再度じわりじわりと押していく。かなり疲れいた彼には、効果的なツボだったらしい。
「もうちょっと体の力が抜けるといいですねぇ～。そうそう、眠る３０分前にお風呂から出るようにすると、血行と神経の循環が良くなるんですよ。試してみてはどうでしょう？」
　あと、アロマオイルを使うのもいいですよ、とアドバイスすると、弥栄は興味深そうに頷いた。

　足つぼマッサージを終えると、猫村翡翠を初めとする１年生達が待っていた。今日は翡翠の誘いもあり、弥栄の妹を連れて彼女の居候先である駄菓子屋『ねこや』へ遊びに行くのだ。手助けになれば、と後木真央と弓弦原譲が彼の妹の世話を買って出てくれたのもあり、一同は弥栄の家を経由して行く事にしていた。

　保健委員としての当番がある為、彼らを見送っていた牡丹は、ぽつり。
「またたびメイト、練乳味が好きですねぇ。あ、でもブルーベリー味も捨てがたいですぅ」
「……ところで、またたびメイトって何？」
　忘れ物を取りに来た逆巻天野が不思議そうに首をかしげる。牡丹は貰ったまたたびメイトを取り出し、天野に栄養補助食品のクッキーである事を簡単に説明した。

　みんなで他愛もないおしゃべりに興じている中、八神修が弥栄に１つの提案をする。
「勉強の件だが、土曜でよければ教えられるぞ。俺自身の復習にもなるからな」
　その言葉に、数名ほどきょとん、となる。弥栄は思わず自分の校章と修の校章を見直すぐらいだ。
「……あれ？　今、復習って……」
「ああ、それで合っている。２年の夏までには３年の範囲まで修めておきたいんだよ」
　同じクラスの翡翠が首をかしげていると、さらり、と答える修。それに弥栄達もまた目を丸くする。
「俺は軽王の商学部を狙っていますが……八神君はどこをうけるつもりなんですか？」
　先日の進路相談の事を思い出しつつ問う弥栄に、修はこれまたさらりと答える。
「行ける所にいくつもりだよ。多分、軽王を滑り止めに、東大かなぁ」
「そ、そんなさらりと……」
　桜庭円もぽかん、と口を開けて驚きを隠せなかった。が、修は苦笑しながら自分の事ではなく弥栄の事じゃないのか、と首をかしげる。
　修は提案として自分が勉強を教える代わりに牛乳が欲しい、と言った。彼の家には猫や犬が数匹いるのだ。しかし、弥栄は少し思案顔である。
「ペット用ミルクは家にあったかなぁ……？　ちょっと父に聞いてみますね」
　話によると犬や猫は牛乳をそのまま飲むとお腹を壊しやすい為、なるだけペット用を飲ませた方がいいらしい、との事だった。

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