Nekojima Nyantasy ～晴雲の章～｜リアクション

Nekojima Nyantasy ～晴雲の章～

■サブシナリオＡ：マジックキャスター・アヤ
　風邪を引いた日の夢は不条理に苦しいものという。
　そんなものは誰かの流したデマだと思っていた青山絢だが、実際不条理な状況に立たされれば信じてみてもよくなるものだ。
「ここって……なに？」
　さっきまでベッドで寝ていた筈の絢は、気づけば立っていた。
　さっきまで着ていた寝間着は中世風のローブに変わっていた。
　しかし何より絢を刺激したのは、彼女をぐるりと取り囲んでいるゴブリンの群れであった。
　嫌が応にもここが現実の理屈で動いていないことを物語っている。
「え、ええと……こんにちは？」
　折角だから、くらいのざっくりした気持ちで挨拶をしてみると、ゴブリンたちは一斉に棍棒を振り上げた。
　ギャーだかウゴーだか表現しづらい言葉を口々に叫んで絢をにらみ付けている。
　言葉が分からないとはいえ、少なからず友好的じゃないことはわかった。
　次にゴブリンたちが一斉に足に力を込め、跳躍によって四方八方から飛びかかってきた時には予想が確信に変わった。
「ちょっと待ってよ、急になんなの！」
　本能的に腕を振って払いのけようとする絢の手から、まばゆい閃光が放たれた。
　閃光という表現で正しいのか迷うほど、それは強くほとばしる光の柱となり、天空の雲を貫いて星の光と化した。
　そんなものを右から左に振ったものだから、ゴブリンの群れは半分ほど灰へと還り、残り半分は口をあんぐり開いて立ち尽くしていた。
　一応危機を脱したらしい。だが安全が確保されていない。
　絢は何か使えるものはないかと周囲を見回し、足下に落ちていたワンドを手に取った。
　黒い宝石で作られたドクロがくっついているといういかにも怪しげな道具だが、その宝石ドクロがギラギラ光ったからさあ大変。
　なにが大変かってゴブリンたちが歓喜の声を上げてバンザイしはじめ、どこからともなく神輿を持ってきて絢を乗っけたかと思うと、ワッショイワッショイゆうて走り始めたのだ。
「どうしよう、なんだか引っ込みの突かない状態になった気がするわ……」
　文字通り場に流されるようにして、新たなる魔王幹部青山絢が爆誕した。

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