ボウリングしようよ！｜リアクション

ボウリングしようよ！

　調子はずれの音が響いて、手元のディスプレイに『ざ～んねん！』という文字が浮かぶ。
「また、ガーター……？」
　桜の投球は、さっきから面白いように外れていた。
「ねー桜、最下位の人が皆に何かおごるってことにしよっか？」
「えっ、そんな、ずるい！」
　当然ここまでのスコアは、桜が最下位である。
「異議あり！」
「じゃあ、多数決とろ！　今の案に反対の人、挙手！」
　桜が手を挙げる。
　桜だけが手を挙げていた。
「そ、そんな」
「残念ね、根回しは完璧よ」
「裏切り者ー！　友達だって信じてたのに！」
「フフフ、悔しかったらせいぜい頑張って、私との最下位争いに勝ってみなさい！」
「望むところよ！」
　よく分からないノリに合わせて返したが、桜のハートに炎が宿るには十分だった。
（落ち着いてやろう。差はたったの20！）
　ストライクに賭けるしかないと、桜は力を込めて投げる。
　しかし――、
「……」
　高校受験合格と引き換えに勝負運が低下でもしたのか、ガーター地獄から抜け出す気配はない。
「…………」
　へこむと同時に、次第に桜の目が真剣実を帯びていった。
「幹事ー、幹事ー、水上ちゃんが激おこです」
「ホントだ、猪突猛進モードに」
「桜ぁ、さっきの冗談だよー？　笑お？」
「…………」
「だめだ聞いてない！」
「こうなったら、皆でくすぐるぞー！」
「合点承知！」
「せーの！」
「………………く、ふ」
　桜の表情が歪んだ。
「ふ、あは、あはははははは！　ちょ、っと、待……って！」
「待ったなし！」
「小次郎破れたり！」
「ギブする？」
「ぎぶ、ギブアップ！」
　白旗宣言に、ようやく解放された。笑いの余韻に桜は目元をぬぐう。
「……一体多なんて、卑怯よ」
　言いながらも、久しぶりにたくさん笑ったような気がした。受験期間中はいささかナーバス気味だったせいもある。
　こうして友達と笑いあいながらボウリングは……楽しかった。
　笑った経緯には一言、言いたかったが。