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2月の魔法の解けぬ間に
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電子チケット普及済みの今日この頃だ。たとえばライブなんかでも、スマホにアプリをインストールして、それを見せればハイ入場、なんていうのがごく当たり前になってきたけれど、
仲村渠 鳴
が好きなのは、やっぱり紙のチケットだった。
紙はひらひらとして軽いが、それでも実在感はあるし、残った半券を記念に保管できたりするし、そしてなんといっても、プレゼントするのが容易だからだ。
「ほ、ほら、いつもお世話になってるお礼っていうか……せっかくのペアチケットだし、ね!」
ペアチケット。つまり二枚入り、映画館の。
放課後、学校の校門。鳴は
乃木 成美
を呼び止めて告げている。別に帰宅後に成美の部屋を訪ねても良かったのだが、なんだか、そこまで改まって切り出すのは気が引けた。あくまでカジュアルに、偶然を装って「ちょうどよかった」と話しかけるほうがいい。
チケットは業界内の招待券だった。音楽関係の知り合いから映画のペアチケットをもらった鳴が、最初に浮かんだのは成美の顔だったのである。
バレンタイン当日、手作りチョコを渡して以来、鳴と成美の間には、いささかぎこちないものが流れていた。歯車の間に溶けたチョコがひとしずく流れ混み、冷えて固まって回転につっかかりを生じさせているかのように。
もちろん顔を合わせれば挨拶はする。日常的な会話も。だがなんというか、話題が続かない。いつも途中で鳴のほうが、「あ、今日用事があって」「今朝、早いんで」といった風に短時間で切り上げ足早に立ち去ってしまうのだ。
理由はひとつ、それは彼女が、成美の顔を見ているうちに気恥ずかしくなってしまうためだった。どうしても彼の、黒目がちな瞳と視線を合わせることができない。物事の本質を常に見通しているような冴えた右目、その目に見つめられていると思うだけで、じわっと額に汗が浮きそうになる。
けれどそれは、決して不快な感情ではなかった。
でもいつまでも、こんな状態ではいけないと鳴は思っている。
成美は鳴にとって、アパートの隣人で頼りになる友人、だからもっと自然に、意識せずに接したい。これまでずっとそうだったように。
だからペアチケットを口実に、次の休日、映画に行かないかと誘ったわけだが、ごく自然に話しかけたつもりが、やっぱりどこかぎこちなく、足が地面から2センチほど浮かんでいるような口調になったことは否めない。
成美のほうは迷いがなかった。
「うん。喜んで」
森の湖畔に吹く風のように、静かに、やわらかく彼は笑んだのだった。
性格的に跳んだり跳ねたりはしないけれど、成美の心は、鈴の入った鞠のように軽やかに転がっている。
バレンタインデーのあのとき、鳴から手作りチョコをもらったことで、成美は自分の心と向かい合った。
嬉しかった。すごく。
他のクラスメイトの誰よりも、鳴からもらえたということが嬉しかった。
どうしてそんなにも嬉しかったのか、それを考えてみれば出てくる結論はひとつだ。
――この感情が『好き』ってことなのかな?
腑に落ちた。たぶん、いや、間違いなく、そういうことなのだろう。
だからチケットを受け取るとき、成美はかすかに手が震えるほど感激していた。ただ、基本がクールな成美のその動揺は、地震計でいえば震度1にも見たぬほど微弱なものだった。鳴にはきっと、震えは伝わっていないだろう。ごく平然と、日常と変わらぬ対応をしたように判断されたに違いない。
成美は苦笑していた。そんな自分に対して。
――我ながら現金なものだね……今まで以上に、内心喜んでいるのだから。
週末の朝に待ち合わせることになった。
陽が出たころに目覚めた成美が、まず向かったのは台所だ。
昨夜からタイマーをセットした炊飯器は、いい香りの湯気をあげている。
「さて……と」
当たり前のように黒いエプロンを巻くと、成美はフライパンを火に掛ける。使うフライパンは二枚。ひとつには油を深めに引く、もうひとつは申し訳程度に油を垂らして薄くのばす。深く引いたほうの油が煮える前に、卵を三つ、ボウルに割り入れ砂糖を加えてかき混ぜていた。
卵焼きを作っている間に、昨夜から仕込んで置いた鶏もも肉を冷蔵庫から出す。
おっと、忘れないように茶も沸かさなくては。
「……それじゃいこうか」
やがて準備が整うと、成美は部屋を出て、鳴の部屋の呼び鈴を鳴らした。
まだまだ身を切るような寒さが続いているものの、ほんの少し、暖かくなってきたように思う。
ふたりならんで映画館まで向かった。
「今この時間なら、余裕で映画館に着くね」
「なら、少しグッズでも物色しようか」
「グッズ? パンフレットとか?」
「それもあるけど、映画モチーフのキーホルダーとか文具とか、最近じゃスマホケースとかもあるよ。実用性はちょっと疑わしいのもあるけどね」
「へー、色々あるんだ。そういやあたし、劇場で映画観るのって久しぶりかも」
こんなごく普通の会話を交わしつつも、成美は胸を高鳴らせている。
好きと意識しているせいだろう。少し、ドキドキする。やりとりのひとつひとつが、宝石状のキャンディのように感じられた。
一方で鳴のほうは、久方ぶりにリラックスして成美と話せているということもあって、映画への期待で胸を弾ませていた。
――楽しみだなあ、久しぶりの映画!
けれど鳴のワクワク感が焦りに変わるまで、そう時間はかからなかった。
何これ、何これ、何これ! ――そう叫びたい気持ち。
指定席につき、客電が落ち、黒いスクリーンに映画が映し出されてほぼ15分後、鳴は目を丸くして身を固くしていた。
ど直球の恋愛映画だったのだ! もうベタなくらいの。しかも主人公は高校生の男女……!
タイトルから勝手にミステリーとかサスペンスを想像していたので、そうとわかってからは椅子の肘掛けをぎゅっと握りしめてしまったほどだ。
鳴は恋愛物語に免疫がない。それはもう、生まれたての赤ちゃんくらいに、ない。
だから筋書きにとどまらない。触れあいそうで触れあえない指先、意味ありげに交わされる視線、セリフ……すべてのパーツ、シーンに動揺する。
頬を染める少女のアップなんて、観ているこっちも紅潮してしまったほどだ!
どうしても鳴は、隣にいる成美を意識してしまうのだった。
彼はどう思っているのだろう。
どんな顔をしているのだろう。
視線を横に向けることすら恐かった。
鳴が耳まで真っ赤になり、逆に血の気を失って青ざめ、また赤くなって……を繰り返しているうちに時間は過ぎ、やがて映画は終わった。
それでも、なんというか、完璧すぎる結末だった。ハッピーエンドだ。不覚にも鳴は目が潤んでしまい、下から上に流れるスタッフロール中に、ごしごしと目をハンカチで拭うはめになった。
――あ、でもエンディングの曲は結構いいかも……。
そんなことを、思った。
上映中、鳴は決して成美を見ようとしなかったが、実は成美のほうは、彼女をちょくちょく観察していた。
盗み見はよくないけれど、心を盗まれたのはむしろ自分のほうだから、許してほしい。
きっと映画馴れしていないのだろう。作品の出来が良かったこともあるが、鳴はきわどいシーンでは登場人物以上に緊張し、心が通い合うシーンでは、唇のひとつも触れあわなくても頬を熱く染めていた。そんないちいちピュアな彼女の反応が、とてつもなく愛おしく思える。
指が触れあったらダメ元で握ってみようかな――そんなこともわずかに考えたものの、なにせ鳴は石像のように動かないし、そもそもそんなことをしたら彼女がどかんと爆発してしまいそうだったから、控えておいた。
でも、いい2時間を過ごせたと思う。
終演後、色々な意味で映画に没入しすぎたか、鳴は立って歩くのがやっとという状態になっていた。
呼びかけても、
「……うん」
「そうだね」
と、まだ夢の世界に半分以上いるような口調で返すばかりである。
「公園に行かない? 弁当、作ってきたんだ」
という成美の問いかけにもただうなずいただけだった。
けれどもベンチに腰を下ろし、手渡された箸で何気なく卵焼きを口に含んだ途端、鳴の心はマッハの速度で現実に引き戻された。
「……どう? 美味しい?」
「うん、美味しい!」
鳴は声を上げてしまう。いつもの味覚障害はすでに、成美と一緒に食事し、充足感を得たことで発動した『ろっこん』によって解消されていた。
「この卵焼き! 甘さがちょうどよくて!」
言うなり彼女は、火が付いたように弁当のおかずを口にしていく。甘めに作った卵焼きはふわふわで、それでいてしっかり味がしみていて、鶏もも肉の唐揚げは、サクッと香ばしい歯触りだった。胡瓜にプチトマト、レタスのサラダはシャキシャキしていて、お手製というタマネギドレッシングが甘辛い豊かな風味を与えている。魔法瓶に入ったお茶すら、淹れたてのようにいい香りがするのだった。
「すごく美味しいよ! どれも、お世辞じゃなくて」
「ありがとう。そんなに喜んでもらえると、こっちも嬉しくなるよ」
けれどここで、うーん、と鳴は苦そうな顔をした。お弁当は美味しいのだが、美味しすぎて申し訳ないような……。
「普通こういうのって、女側が作ってくるものだよね……?」
「そうかい? 僕はそう思わないなあ」
「そりゃ成美の方がずっと料理上手いし、あたしが一人で作るのは難しいってことは成美も知ってるだろうけど……」
「気にしないで。性別関係なく、得意なほうが得意なことを担当すればいいんだよ」
「うん……そうだね」
でも、と鳴は思うのである。
――だったらあたしの得意なことって、何? 成美よりよくできることって……?
口から出かかったその言葉を、ぐっと飲み込む。
料理だけじゃない。成美は家事全般が得意だし、優しいし、気配りもできる……。
――あたし、成美の隣にいるには女として失格すぎるんじゃ……。
そんなことを言えば、彼を困らせるだけだろう。この幸せな時間が壊れてしまうかもしれない。
黙ってしまった彼女に、鳴はいくらか怪訝な顔をした。
「どうかした?」
「え……? ううん、なんでもないよ、美味しすぎて感動しただけ!」
と言って誤魔化したものの、鳴は密かに決意していた。
とにかく、なんとかしないと――彼に釣り合う『何か』を身につけたいと。
得意なことを、と言ったとき、成美は続けてこう言うつもりだった。
『たとえば鳴は、僕を幸せにするのが誰よりも得意だよ』
と。
けれどそれはあまりに一方的な言葉のような気がしたし、第一、そうと決まった恋人に言うのであればいいが、まだ鳴が自分のことをどう思っているのかわからないのに口にするのは、好意の押しつけのように感じられて躊躇したのだった。
ずっと彼女とこうして、一緒にいたい、日常を送りたいと思っている自分に成美は気付いた。
だから気になる。
鳴は僕のことをどう思っているんだろう――と。
好きだと、いいな……。
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桂木京介
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
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定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年10月28日
参加申し込みの期限
2016年11月04日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年11月04日 11時00分
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