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2月の魔法の解けぬ間に
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「今からか?」
詠寛美は首をかしげていた。
「そう、今から。……詠が嫌じゃなければ、だけど」
市橋 誉
は穏やかに微笑した。誉は基本、微笑の似合う少年なのだが、寛美を前にすると、その笑みはいつもよりもずっと温かみを帯びたものとなる。
放課後、たまたま帰路で彼女と出会って、誉は「いい機会だから」と誘いをかけたのである。
「別に嫌じゃねぇけどさ」
ショルダーバッグを肩にぶら下げたまま、寛美は腕組みしている。黙っていれば綺麗な顔立ちなのに、どうにもこういう、屋外に出しっ放しのサボテンみたいな口調と仕草がいちいち似合う彼女なのだった。
「俺には場違いって気がすんだよな」
彼女は思案顔だ。誉は、大丈夫、と請け負った。
「俺は行きつけの店だよ。変に気負うところがないから、気に入ってる」
そして誉は、優しくこう言ったのである。
「ご馳走したいんだ、バレンタインの栗きんとんのお礼に」
面と向かって言われて照れたのか、それともばつが悪いように思ったか、寛美は腕を組んだまま頬をかいた。
「ああ、あれな……あれ、スーパーで適当に買ったもんだぞ。だいたい、俺からの礼だってば」
てか、バレンタインじゃねーし、前日だし……なんて、やや小さな声で言い足している。
はは、と誉は小さく笑った。
「どこで買ったものであれ、俺は美味しくいただいたよ。それに、返礼というのは建前で……いつもみたく一人で行くのも味気ないから、詠に付き合ってもらえたらなって」
「ま、そういうことなら」
と、結局寛美は首を縦に振った。
誉が寛美を連れて行ったのは、旧市街にある老舗のジャズ喫茶だった。
ドアを押して開くと、年代物のブランデーのような、甘くまろやかなサックスの音がふたりを包んだ。それを追うようにして、饒舌なピアノがメロディを添える。
音楽はクリアに聞こえるものの、ヴォリュームは適度に絞られていて、決して会話の邪魔にはならない。これはオーディオがいいからこそだろう。アナログレコード特有の、時間や空気の音まで封じ込めた隙間のある音だった。
木のレリーフで作られた看板。上からつり下がっている照明に、暖炉。 煉瓦をあしらった壁。
「マスターがサイフォン式で淹れてくれる珈琲がとても美味しいんだ」
その言葉を裏付けるように、カウンターの上では飴色した硝子製の器具がコポコポと音を立てている。よく焙煎された珈琲の、深みのある香りも漂っていた。
誉はこの空間が好きだ。
レトロなのにクールで、でも、やわらかい。アットホームと言い換えてもいいだろう。
「いらっしゃい」
と述べた初老のマスターは、おや、というような目をしたが、それ以上はなにも言わない。
「今日はテーブル席がいいかな」
誉は軽やかに告げる。マスターは、「じゃあ奥に」と短く告げた。誉がここに女性連れで来るのは、これが始めてだったのだ。
テーブル席は衝立で仕切られており、プライベートな空間になっている。ほんの少しだけ暗く、どことなく教会の懺悔室のようだ。木の匂いがした。
「洒落た店だな」
動物園の檻に入れられた虎のように、誉は落ち着かぬ様子できょろきょろしていた。
「そうかい? でも、敷居が高いわけじゃないよ。軽食はごく一般的なものだし、料金も良心的だ」
ふーん、というように寛美は頭の後ろをかいていた。
「軽食はもちろん、デザートもすべてマスターの手作りで美味いんだ。俺のお勧めのメニューはミートソーススパゲッティとホットサンド、デザートにはチョコレートケーキかな。どこか懐かしい味がして、お気に入りなんだ」
もっととっつきにくい名前のメニューでも出るかと思っていたのだろうか、馴染みのある名前を聞いて寛美は少し、緊張を解いたようだ。
「そっか……なら、お勧め通りにするとすっか。ミートソースもホットサンドも好物だ」
「チョコレートケーキも?」
「おう、好きだぞ」
このあたり、寛美は実に屈託がない。
「今みたいな寒い季節には、ミルクたっぷりのラテマキアートで温まるのも最高だけどな」
「待て待て、後出しはなしだろ。情報を足されると決心が鈍る」
「それは失敬、だったら、次の機会ということに」
くすっと笑って誉はマスターを呼んだ。寛美の声に血色が戻ってきたのが嬉しかった。
料理が運ばれてくると、ますます寛美は上機嫌になった。
うっかり頬張ると火傷しそうに熱いホットサンドも、肉っけたっぷりのミートソースも、寛美は気に入ったらしい。
「うん。美味いな。うんうん」
細っこい体をしているわりに彼女はよく食べる。男性の誉よりいい食べっぷりかもしれない。
「それはよかった」
寛美と向かい合いながら誉は目を細めている。この店が褒められると自分が褒められたような気がする。ずっとこうして、見ていたいくらいだ。
ある程度片付いたところで、寛美はテーブルの片隅にあったプラスチック製の装置に目をやった。
ガムボールマシンのようなスロープがついている。コインを入れる口もあった。
「ところで、これ何だ?」
「レトロな占いガチャってやつだな。お金を入れると、上のルーレットが回って『おみくじ』が排出されるという代物だ。やってみないか?」
「おごりなら」
本当に、こういう点は遠慮やためらいのない寛美である。誉はうなずいて硬貨を二枚取り出した。
「市橋、先にやってみてくれ」
「いいよ」
「市橋は何を占うんだ?」
「俺は……将来の夢かな」
「夢って?」
「誰にも言ったことがないけれど……ジャズピアニストになって、自分の喫茶店を持つことが俺の夢なんだ」
「かなうといいな」
寛美は、彼女にしては素直すぎるくらい素直に微笑んだ。
「おごってもらったから言ってるんじゃねぇぞ。マジでそう思ってる」
「ありがとう」
わずかに迷うも誉は意を決し、できるだけ自然に続けた。
「いつか俺が喫茶店をオープンしたら、詠に来てもらいたい。俺、詠が美味しいと言って笑う顔が……好きなんだ」
「そうかい」
おみくじを開くと、『You Can't Always Get What You Want.(望むものすべてが手に入るとは限らない)』とあった。
行を変えて、『だが時として叶う望みもある』と付記されている。
くじから誉が顔を上げると、寛美の視線とぶつかった。
「どういう意味だそれ?」
「……ま、がんばれ、ってことかな。要約すると」
「占いってのはそんなもんだろ」
と寛美は笑って、
「さっきの話だけどな。……ま、俺もいつまでもこの島にいるとは限らねーけど、誉が店を出したら行くようにするぜ」
「ただしおごりなら?」
「ただしおごりなら」
にやりとすると、寛美は自分も硬貨をマシンに入れた。
「寛美の願いは?」
「願い、っていうか……」
寛美はまた、首の後ろに手をやりつつぼそっと告げた。
「他に彼女がいる男に興味持つのはやめたほうがいいかどうか、教えられるものなら教えてみやがれ……って、こいつに訊いてみたい」
出てきたおみくじにはちょっとした文章が書かれていたが、要約すると『わからない』という意味になるようであった。
――『2月の魔法の解けぬ間に』 了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
ご参加ありがとうございました! マスターの桂木京介です。
個人的なバレンタイン援護シナリオ、前日譚が私の前作『バレンタインデーなんて知んねーし!』であったとすれば、こちらは後日譚ということになるでしょうか。
皆様の2月の魔法、ありがたく拝読し、リアクションに反映させて頂きました。
恋が成就した人も、これから恋が生まれる人も、楽しんで頂けたとすれば幸いです!
それではまた、新たなシナリオでお目にかかりましょう。
ご意見ご感想、心からお待ち申し上げております。
桂木京介でした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
コメディ
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年10月28日
参加申し込みの期限
2016年11月04日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年11月04日 11時00分
参加キャラクター一覧
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