マジコーネ大陸記｜リアクション

マジコーネ大陸記

　四人になった冒険者たちは、今度は分かれ道の右を通って進む。
　時折巨大昆虫が襲いかかってくる以外は、モンスターとも遭遇しない楽な道中だ。
　この辺りはゴブリンは来ないのか、松明もなく暗い。ハルトのランプを先頭に進む。
「宝を見つけたら、キャンプにするか」
　旅人であるハルトの感覚は、そろそろ夜だと告げていた。休めるときに休んでおかないと、いざという時に危険だ。
「なら、この場所はどうだ？」
　カエデが地図の、鍵マークのついた場所を指で叩く。
「この先は合言葉もあるんだろ？　俺はここにカギがあると思うね」
「すぐそこだし、確認ついでに探索するか」
　カタナがそう言った時だった。
　風が生じ、闇が彼らに覆いかぶさってくる。
「なんだコイツ！？」
　ゴウが闇の中に光る一対の目を見つけ、顔を庇う。
「伏せるんだ！」
　そう言って伏せたハルトが光を向けると、襲撃者の正体が明らかになる。
　人をはるかに凌駕する大きさのコウモリだ。
「デカイな！」
　カタナは驚きながらも刀を振るった。翼を裂かれたコウモリは地に落ちるが、そのまま地面や壁を跳ねるようにして迫ってくる。
「任せろ」
　ゴウが前に出た。防御態勢に入った彼の鎧を、コウモリの鋭い牙や爪がかきむしっていく。
「その程度じゃ、俺は倒せないぜ」
　敵は重量こそあるものの、金属鎧を貫く鋭さは持ち合わせていなかった。ゴウは冷静に剣で突き、後方からカエデがナイフを投げて牽制する。
「殺生はなるべく避けたかったが」
　ハルトは剣を振るった。直後、剣身から風の力が巻き起こり、斬撃は衝撃波となって吹き荒れる。
　壁に叩きつけられたコウモリは、そのまま落ちて動かなくなった。
「やれやれ、どうやらこの部屋はこいつの住処だったみたいだな」
　カエデは件の部屋に入って、腐臭に眉をしかめた。コウモリは虫やゴブリンを食事にしていたようで、あちこちに骨や腐った肉が散乱している。とても寝れたものではない。
　その中から首尾よく鍵を見つけて、一行は先を目指すことになった。
「この辺りにゴブリンがいないのは、アイツのせいだったのか」
　カタナの呟きに、ハルトはうなずいた。
「いざというときのために、ゴブリンを確保しておくか」
「いや、さすがにそれはやめようぜ？」