マジコーネ大陸記｜リアクション

マジコーネ大陸記

　四人と別れた後、カヤはしばらく歩いてから止まった。
（酒場側は多数に声かけてたし……情報は洩れているだろうな）
　そのまま、少し遅れて入り口側へと引き返す。
（ずっと、誰かに尾けられてる気がしてたんだ）
　その正体を知るために、カヤは足音を消しながら慎重に進んだ。複数の人影が前方に見えてくる。
「やっぱり……」
　一緒にいた四人ではない。ゴブリンのいた場所で話しているのは、高利貸しの雇っている黒服たちだ。
「奴らが入ったのはこの洞窟か」
「一人たりとも逃がすなよ。全員殺さないと話がややこしくなる」
　武装した彼らが話す内容に、カヤは息を呑んだ。
（このままじゃみんなが背後から襲われる……！）
　カヤはとっさに口を開いた。
「ひゃー！　みんな見ろよ、300ゴールドなんて目じゃねぇぜー！」
　軽薄な声を出し、洞窟に反響させる。
「おい、こっちみたいだ」
「ちょうどいい、浮かれてる所を皆殺しだ」
　来た。
　男たちが走ってくる。
　カヤは奥へと走り出すと、くだんのドクロマークの部屋の手前で身を隠した。
「おい、この部屋だ。急げ！」
　息を潜める彼女の前で、黒服たちが入っていく。
　カヤは懐から猫の絵が描かれた紙を取り出すと、それを部屋の入口天井へと投げ、接着させた。
　――うわああ！？
　――ゾンビだ！　ゾンビが！
　中から悲鳴が上がり、足音が戻ってくる。
「皆殺しなんて言わなきゃ、僕ももう少し穏便に済ませたよ」
　酷薄にそう呟くと、カヤは重力増加の魔法を発動させた。
　天井の土砂が震え、やがて崩落を引き起こす。
　入口を塞ぎ、カヤはその場を後にした。