マジコーネ大陸記｜リアクション

マジコーネ大陸記

　暗がりの奥で道は左右に二つ分かれていた。
　地図によれば、宝のある場所は右側に通じていて――しかし冒険者たちはあえて左側の探索を選んだ。
「拡張工事、気になるね」
「昔の話なら、今なら直接繋がってる可能性もあるよな」
　カヤとカタナの話すその内容は、全員の共通した予感でもあった。期待通りといかなくとも、地図にない変化は確認するに越したことはない。
　はたして、道はかなり奥まで掘り進められていた。しかし、なぜか宝のある部屋の手前らしき場所で、唐突に終わってしまっている。
　原因は、終点にあった。
「ただの土壁じゃないな」
　光源に輝きを返すその壁に、ゴウが近づく。観察しながらナイフを突き立てると、カン、と硬い音がして弾かれた。
「前に王国の遺跡で見たことがある。特に古い遺跡には、古代文明で使われていた硬くて、錆びない金属があったりするんだ」
「聞いたことあるぜ」
　カエデが口笛を吹いた。
「貴重だから取引額がバカ高いってな。この壁だけでも、軽く500ゴールドはするんじゃないか？」
「そんなに……？」
　カヤはシャベルを取り出し、目で問うが、ゴウは首を振った。
「いや。これだけ大きいと、かなり特殊な道具で取り出さなきゃいけないはずだ。時間もない」
「宝というのが、前より気になってきたな」
「ああ。それにこの金属があるってことは古代遺跡なんだよな、ここ？」
　ハルトやカタナの見立てでは、この壁は外殻部……すなわちマンキチの遺産は、古代遺跡の内側にあると見ていい。
　一般に古代遺跡から発掘される武具は、通常出回っているものよりはるかに希少で、強力なものが多い。
　それに遺跡の数自体が少ないので、発見すれば一躍有名になれるのだ。
「俺もまさかこうなるとは思わなかったな。それに九夜連邦は古代遺跡の保護に取り組んでいるから、申請すれば全員に報償金も期待できるぞ」
　ゴウも勢い込む。彼もロマンを夢見る冒険者の一人。手付かずの古代遺跡は富と名声と諸々手に入るチャンスだった。
「……ま、その辺りは仔猫亭とも相談か。俺はパトロンと話す必要が出てきて面倒くさいぜ」
　肩をすくめ、カエデは道を引き返す。
「行こうぜ、時間も食っちまったしな」
「うん、そうだね」
　カヤはうなずいたが、最初の分かれ道に戻る前に、別の道を指差した。
「悪いけど、僕はこっちにも興味があるから、先に行ってて」
「一人で大丈夫か？」
　カタナが聞く。この先はドクロマークがついた部屋だったはずだ。
「大丈夫。ちょっと気になることがあるだけだから」
　そう言って、カヤは一行から分かれていった。