マジコーネ大陸記｜リアクション

マジコーネ大陸記

「さて」
　町はずれにある屋敷の奥、高利貸しの青年は執務卓に座るとわざとらしく嘆息した。
「困りましたね。町ぐるみで営業妨害されるとは」
　そうして、ユウキやサキリに視線を移す。
「アカバネ君、冒険者たちを追ってください。やることは、分かっていますね？」
「嗚呼、わかってる」
　熾火（おきび）を宿したような声音で、ユウキは首肯した。
「世話になっているんだ、俺があんた等に力を貸すのは当然の事だ……だが一応確認しておこう」
「ふむ。なんです？」
「本当に今回の仕事は『正義』に基づいているんだろうな？」
　静かな目と口調だったが、返答次第では小さな炎が大火になると思わせる、そんな気配をユウキは漂わせる。
「もし約束を違えるようなら、『悪』として裁くぞ？」
「……フフ、『ブレイブファイア』と呼ばれた君に睨まれると、さすがに肝が冷えますね」
　と言ったわりには落ち着いた様子で、青年は続けた。
「ご安心ください。今回の仕事は洞窟に向かい、盗掘作業を行う『悪』を葬り去るまでのこと。ただそれだけです」
「なるほどな。冒険者ぶった盗賊というわけか……なら問題ない」
　赤毛の少年は納得したように笑みを浮かべると、静かに部屋を出ていった。青年が笑う。
「己が妄信する『正義』以外はすべて『悪』として断ずる……相変わらず彼もなかなか壊れてますね」
「僕が同行しますか？」
　尋ねるサキリだが、青年は首を横に振る。
「彼の実力は一級ですよ。部下もつけますし心配ありません。サキリ君には引き続き、ケンウッド君と屋敷の警護を頼みます。そろそろ、ネズミが外に現われる頃合いでしょうからね」

「う～ん」
　屋敷の近くにあるカフェで、ハジメは唸っていた。
「ダメだ、どこも簡単には入れそうにないや」
　屋敷の周りは、黒い服を着た、いかにも屈強そうな男たちが警護している。番犬も放たれているようで、一筋縄ではいきそうにない。
　ボタンから情報収集を頼まれて、早くも数日が過ぎようとしていた。
（おねーちゃんはのためにも、頑張らないといけないのに……）
　焦燥感を抱きながら、ハジメは屋敷の監視を続ける。
　その時だった。
「そこのお前、なぜさっきから屋敷を見ている！」
　店に黒服たちが怒鳴り込んできて、店が騒然となる。
（見つかった――！？）
　ハジメが身体が強張った。