マジコーネ大陸記｜リアクション

マジコーネ大陸記

　洞窟の中は、入り口を抜けると急に広くなった。
　ゴブリンたちも住居に適していると踏んだのか、時々彼らの作った松明もどきが設置され、弱々しい灯りをともしている。
　そして、
『ギャギャッ？』
『ギギッ』
　三叉路で見張りをしていた緑色の人型生物――ゴブリンたちは、侵入者の気配に牙をむき出しにした。
　迷い込んできたか、右も左も分からぬ足取りで、旅人風の男がさ迷い歩いてくる。
　道は暗がりが多く、男はまだゴブリンたちに気付いていない。ゴブリンたちは顔を見合わせると、奇襲を仕掛けるべく動きだす――否、しようとした。
『ギャ！？』
　突然ゴブリンの片割れが悲鳴をあげ、地面に倒れる。
『！？』
　その理由をもう一体のゴブリンが知るより早く、闇から伸びたナイフがその命脈を絶った。
「終わったか」
　旅人風の男――ハルトが、スニークキルを行ったカエデの元に歩いてくる。
　カエデのスタイルは盗賊系、それも隠形が得意なタイプだった。
　それにより、気配を消してゴブリン二体を瞬殺したのだ。
「できる限り殺生は避けたかったが」
「今回は無理だな。むしろ助けを呼ばれたら、こいつらだけじゃ済まなかったぜ？」
　ナイフから血脂をふき取り、カエデが粗野に笑う。
「……そうだな」
　ハルトも異論なく、右の通路へと入る。
　――今回、冒険者たちはコウモリやゴブリンチーフのいる左の部屋には行かないことにしていた。
　念のため右の通路を調べることにしたハルトは、暗い一本道で手元の布を少し開いた。
　用心のため光量を抑えていたランプが、隙間から地面を明るく照らす。
　地面に転がっている大小さまざまの石に混じり、風化したモンスターの骨が混ざっている。
「どうだった？」
　やがて戻った彼に、カヤが問う。
「この先は岩で塞がっていた。この洞窟の一部は崩れやすい地質のようだ」
「大人数で進むと危ない場所もあるってことか」
　ゴウが頭上から落ちてくる砂粒にぞっとしない顔になる。ハルトが念入りに調べたおかげで、洞窟は崩れやすいという情報が明らかになったのだ。
「派手な魔法を使わなければいいってことだな？　ならさっさと宝物を見つけて出ようぜ」
　カタナのその言い分ももっともで、五人は奥に向かう足を早めた。