マジコーネ大陸記｜リアクション

マジコーネ大陸記

　すさまじい熱気がサキリの顔をあぶる。
　かなりの高温だった。
　屋敷は軒並み炎に包まれており、吐き出された黒煙が屋根の上を流れていく。
　下手に呼吸しようものなら肺が焼かれ、黒煙に呼吸困難になりそうなその場所で、サキリは青年と対峙していた。
「なかなか粘りますね」
　炎と煙に彩られた屋上なのに、青年は不思議にも平然とした様子でナイフを構えている。
「コロッセオでの名はたしか『赤刃の悪魔』でしたか。大層な名前かと思えば――」
　青年の手から放たれた黒い魔法が襲いかかった。転瞬、サキリの姿は青年の背後にある。
「瞬間的な移動――なるほどその赤く光る刃も含めてまさに悪魔的な力ですね」
　斧とナイフが激突した。圧倒的な膂力がサキリの斧を押し返す。サキリは連続攻撃を止めて後退した。
「まさか、僕の能力に反応できるとはね……」
「悲観する必要はありませんよ？　帝王様から力をもらった私ですら、君を仕留めるのには時間がかかりすぎる……残念ながら、ここらが潮時でしょうね」
　青年の姿が黒煙に紛れた。
「いずれ会いましょう。次が決着の時です」
　風に煙が晴れた時には、青年の姿は消えている。
「逃げられた。いや、助かったのか」
　サキリは膝をついた。青年に隙を突かれないよう、窒息寸前まで自分を追い詰めて戦っていたのだ。
（あの力に魔法、尋常な人間のものじゃない……だが次こそは必ず！）
　サキリは決意の眼差しを敵のいた場所に向けながら、転移を行った。