マジコーネ大陸記｜リアクション

マジコーネ大陸記

「あ！」
　屋敷を見張っていたハジメは、屋敷の中から炎が噴き出すのを見た。
　――おねーちゃんの言った通り、他にも動いている人がいたんだ！
　上がった火の手に、屋敷内は騒然としている。利用しない手はなかった。
「えい！」
　作っておいた火炎瓶を庭の一角に投げ込み、ハジメは走り出す。
「なんだ、むこうでも火が上がったぞ！？」
「早く消せ！」
「誰かいるぞ、こいつがやったのか！」
　上手い具合に混乱が広がっているのを耳にしながら、ハジメは手近な窓を割って入る。
　――騒ぎがあっても、警備が残ってるところに重要なものがあるはずだ。
「上手くやってみせるから！」
　愛する主のため、ハジメは部屋にも火を放ち、後にした。

「なんだぁ？」
　屋敷から上がった炎を、リュウジもまた見ていた。
「おいおい、予定の時間より早いじゃんか……つーことは別のやつか」
　ともかくも塀を乗り越え、屋敷の庭に侵入するリュウジ。
　その姿は、日中の冒険者姿ではなかった。
「まあいいさ。だったら予定を早めて、囮役をするまでだ」
「誰かいるぞ！？　こいつがやったのか！」
「なんだこいつ、変態か！？」
　彼の姿を見つけた黒服たちが困惑したのも無理はない。
　今宵のリュウジは蝶の仮面に七色褌のみという、異彩放つ格好をしていたのだ。
「はっはー！　巷で話題の怪人とは俺のこと！」
　仁王立ちのまま、大仰にのたまう。
「俺こそが悪を正す正義の怪人『RYU☆ZIN』さ！」
　ドドーン！
　折よく放った花火が景気よく爆発し、カラフルな煙が背景を彩る。
「女性のおっぱい揉みたいぜー！」
　想いを叫ぶことで魔法を発動、身体強化をも行う。
「くそ、変態め！」
「朝日を拝めると思うなよ！」
「ハッ、そりゃこっちのセリフだ！」
　向かってくる黒服たちに、リュウジは真正面から突撃する。振るわれた拳を払っては殴り飛ばし、薙いでくる剣を沈んでかわしては蹴り飛ばす。
「そらそら、どんどんかかってこいやー！」
　彼が大暴れしたおかげで、庭の人員が屋敷に戻ることはなかった。