新生ショッピングモール、ただいま店舗募集中！｜リアクション

新生ショッピングモール、ただいま店舗募集中！

■シーン６：クローゼットを七色に染めて
　仕事帰り。どっぷりと疲れた身体を癒やすべく旧市街を歩く。
　真境名アリサ、２１歳。ちょっと特殊な、されど実力がものをいう仕事をする女。
　自宅前。ポストを開く。
　見たことの無い名前の、少し厚みのある封筒だ。
　鍵を開けて自宅のドアをくぐりつつ開いてみると、それはショッピングモールのサービスチケットだった。
「あら、これは好都合」
　チケットをひらひらとやって、アリサは頭の中で明日の洋服選びを始めた。
　休日の過ごし方としては、ぴったりだ。

　モールは開放的な、それでいて牧歌的な作りをしていた。
　よく最新技術の粋を集めると、白っぽい神殿めいた建物になりがちだが、全体的に落ち着いた色調の、所々に緑が目に付く設計になっている。
　用事としてはお買い物に来ただけなのだが、仕事場とは大きく異なる空気に、アリサは肩の力を抜いた。
　入り口を通ると、クレープショップや輸入雑貨店を挟んでファッションエリアが広がっている。
　くねった道に点々と並ぶ店はどれも個性的で、アリサの趣味に合った店を見つけるのもそう難しいことではなかった。
　下着類や商売道具なんかを見繕うだけでもいいが、折角商品券があるのだ。ここは少し贅沢をしよう。
「うーんと……春物なんか、揃えてみようかな」
　春物と呟いて置きながら、『春めいた色調の水着』を想像する辺りは職業病といったところだろうか。
　自分の発想に苦笑しつつ、コケティッシュな店へと入っていく。
　まずはモッズコートがいい。三月に入るとはいえまだ寒い。ニットなんかも併せておきたい。
　アリサは肌色や髪型からしてアースカラーが（私服では）合うので、コートの種類には困らなかった。強いて言うなら胸の大きさが日本人的ではないのでシャツや下着を選びづらい所なのだが、ニットならその心配もないだろう。
　あとは努力して細く保った足をよく見せるための細身のデニムパンツやブーツを揃えて……。
「あ、っと……折角だから下着も贅沢しちゃおうかしら」
　商品券があっても、買い物を進めているとテンションが上がってくるもの。
　セクシーな下着も手に入れてみたい。
　そう思って、有名ブランドの下着ショップへ入ってみると。
「うーん……もうすこし上のサイズ、ありますか？　あっ、あるんですか！？」
　北条冬華が店員を驚いたように二度見していた。
　下着専門店なんだから大抵のサイズはあるでしょうにと彼女の持っている下着を見る。
　Ｅとあった。
　アリサは二度見した。
　ブラと冬華の胸をうっかり見比べてしまうのも、無理のない話だろう。
「へえ、こんなサイズまであるんですね。助かります……日本じゃ手に入らなくて」
　下着豆知識。普通の洋服店には置いていないようなサイズでも、専門店には結構置いてある。
　流石にあれほどじゃないなあと思いつつ、アリサも下着を物色してみた。
　可愛いものとセクシーなもの。両方持っておきたい。冬華の清楚系な趣味とは異なって少々派手なものでも手に取るアリサである。
「とはいえ見せる男は……」
　おっと。

　下着の物色も終わった。水着も買ったし、春は優雅に越せそうだ。
　予想した競馬の結果なぞスマホでチェックしつつ、アリサは紙袋片手にベンチを立った。
「この後はどうしようかな。あ、そうだ」
　読んでる漫画の発売日が確か今日だ。書店に寄っていこう。
　アリサの手元に商品券は残っていないが、それはそれでよし。
　楽しい休日を過ごせそうだ。

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