世界が終わりそうな夜に｜リアクション

世界が終わりそうな夜に

【島の上の大きなお城】

　その日、青山絢は疲れていたので早めに眠りについた。
　だが、疲れているはずなのに、不思議と数時間経つとすぐに目が覚めてしまった。
（これは、夢……？）
　目の前には、夜空と巨大な城が広がっていた。
「あれー？　お空にひよこさんが浮かんでるよぉ」
「……？」
　のんびりした少年の声に、絢は振り返り、そこで自分が鞄につけていたひよこのストラップになっているのだと気づいた。

　　　　* * *

　曖浜瑠樹は、気がつくと夜空の真っただ中にいた。
「あれぇ？　オレ、ラピちゃんになってるねぇ？」
　その姿は、大好きなうさぎの縫いぐるみのラピの姿になっていた。
「うわー！　オレ以外にもたくさん縫いぐるみがいるよぉ！」
　ゆるくて可愛いものが大好きな瑠樹は、とりあえず驚くよりも状況を楽しむことにした。
　とりあえず手近にいた小さなひよこのストラップに声をかけてみたところ、それがひよこになった青山絢だった。
「ひよこさんも寝子島から来たのぉ？」
「ええ。ということは、あなたも寝子島の子なのかしら？」
　ひよこは、一瞬警戒していたものの、聞こえてきた声がまだ幼い男の子だと気づいて、安心したようだった。
「うん、そうだよぉ。ん～？　って、ことは、他の人（？）達も皆寝子島の人なのかなぁ？」
　くるくると夜空を見まわす瑠樹の問いに、ひよこ（絢）は「……さあ、どうかしら？」と小さな首を傾げるばかりだった。

　　　　* * *

　恵御納夏朝も、ふと気づくと星空に浮かんでいた。
「……あれ、僕浮いてる？　しかも、足がない……ていうか、この姿は――ハルくん！？」
　いつも身に着けている愛用のオレンジのパぺットの姿になった夏朝は、ハルくん自慢の大きな口をパカッと開けて驚いた。
（……これも神魂の仕業かな？　あ、猫さんの縫いぐるみとかいるかな……）
　夏朝は、風の吹くままにふわりと楽しげな方向へと移動を開始した。

　　　　* * *

　遠野まほろは驚いていた。
「……私、縫いぐるみになってるんだね。……また神魂のせいなのかなぁ」
　猫のぬいぐるみになって、空を飛んでいることよりも、その事実を認識してなおさして驚かない自分自身に、ひどく驚いていた。
「……みんなどこかに向かっているみたい。……あれは、お城？」
　とりあえず、まほろは城に向かってみることにした。

　　　　* * *

　滝原レオンも夜空の中にいた。
「なんだこりゃ！？　身体が『ましろ』に……ぬいぐるみになってるぞ！？」
　レオンは白いうさぎの縫いぐるみ姿になった自分の手を見て、悲鳴じみた声を上げた。
「……また、神魂か。なら、いっそのこと思いきり楽しんでやるか！」
　若干はしゃぎつつ、レオンは縫いぐるみ達が目指す大きな城へ向かう。

　　　　* * *

　加藤神々ノ黄昏は、やや錯乱していた。
「私がフェンリルちゃんで、フェンリルちゃんが私でございますです！？」
　神々ノ黄昏はフェンリルちゃんの姿に変身していたので、彼女の言っていることはだいたいあっていた。
「まるで夢のような光景でございますっ！　はっ、そうでした……！　この夢を見せてくれた方にお礼を言わないと！」
　そうして、彼女もまた空のお城へ向かう。

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