春のパンケーキ祭り｜リアクション

春のパンケーキ祭り

「お待たせー」
「まずは拓郎のリクエストの『キャラメルナッツ』『バニラアイスクリーム添え』。あと生クリーム」
　エリセイの紹介の間に、英二と武道の手で、一口大にカットされたものが行き渡る。皆がフォークを手に取ったところで、エリセイが拓郎の横にスマートフォンを出した。
　画面にはカットされる前の、クリームトッピングのパンケーキの写真が映ってる。
「さっき君が言ってた『生クリーム多め』って、この画像くらい？」
　拓郎は少し考えてから、こくりと頷いた。
「ハワイアンパンケーキみたいなのは、多すぎだとおもう」
「これにアイスものせる、と」
「あったかくて冷たくてで……、より味がおいしい」
「そんなにクリームのせてアイスまであったら、甘すぎない？」
　辛党の武道が口を挟んだが、エリセイは軽く首を傾げた。
「体温と温度が違うと甘味が麻痺するからね。それと甘味はアイスで、クリームは食感重視ってトコかな」
　拓郎がパンケーキを咀嚼しながらこくりと頷いた。
　英二も美味しさを笑顔で表している。以前専門店でパンケーキを食べた時も思ったが、奇をてらわず普通の味のほうが、英二としては評価が高い。
「このトッピングは良いですね。シンプルながらも味わい深くてグッドです！」
「とりあえずこの『キャラメルナッツのパンケーキ』は、第一候補のひとつに加えても良さそうね」
　皆の反応を見ながら康子がメモを書き込んでいると、次の試食メニューをレナートがキッチンから運んできた。

　次の皿は近頃流行の、ケーキの上で綺麗に焦げ目をつけられた無数のマシュマロが溶けかけている、見た目の面白い品だった。
「これは桜ちゃんと誉の言ってた『焼きマシュマロ』のトッピング、『アイスクリーム添え』」
　エリセイが小さいボールをいくつか皆の前に置いた。中にはグラノーラや、先ほどのキャラメルナッツや、スプレーチョコが入っていた。　
「桜ちゃんの言ってた焼きマシュマロにのっけるやつ。色々有りすぎるから、自分で試したいの食べてみて」
　ヒューが早速グラノーラをスプーン一杯分トッピングしている。
「マシュマロは初体験ね」と水樹がワクワクしながら言うと、提案した誉が口を開いた。
「焼きマシュマロの表面はサクっとして、中がフワフワな甘さがパンケーキに合うんだ」
「ならその食感が失われないうちに食べないといけないわね」
　水樹は早速口に運んで、「んんっ！」と新しい発見を喜んでいる。ヒューが同意するように水樹に笑顔を向けた。
「それからもう一つ、桜ちゃんご所望のコレ」
　レナートがミルクポットに入れたエスプレッソを出した。
「アフォガート風ってとこかな？」桜が「そう、これ！」と身を乗り出す。
「昔思いつきで作ったんだけれど、溶けたアイスとエスプレッソが焼きマシュマロやパンケーキと絡み合ってとてもおいしかった！」
　皆が空にした皿をカウンター内に戻していた英二は、桜がミルクポットを傾けるのを見ながら「ふむ」とレナートを見た。
「パンケーキに沁みて、また別の食感になりますよね」
「そうだね、どちらも提供時間がキモか。
　マシュマロが冷たくなって硬くなってしまったら台無しだし、エスプレッソをかけるなら量はお客様がご自分で調節したいだろうから。タイミングをケーキの焼きあがりと合わせないと——」
　従業員が顔を見合わせると、康子が「その辺りも含めて、検討しましょう」と頷いた。

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