【マラソン大会】晴れ、ときどきあわあわ！？マラソン大会！｜リアクション

【マラソン大会】晴れ、ときどきあわあわ！？マラソン大会！

「勝った……！」
　執は、二ヶ所目のジェット噴射機群の前にきてほくそ笑んだ。
　まだ稼働していない泡噴射機は、噴射口が開口することで起動し、実は方向操作とともに一括で電動制御されている。
「俺が調べた通りなら、これは一部の家電の電波で干渉、すなわち疑似ハッキングが可能……！」
　取り出した改造リモコンのボタンを押す執。予想通り噴射機が連動して動き出した。
「よし！」
　これで沼田さん以外にジェット噴射をかけて足止めをし、妨害すればいい。
「ん？　ここは10kmとの交点なのか」
　別の道から見えてきた人影に、しかし執の笑みは止まらない。リモコンで10kmランナーへと噴射口を向ける。
「ちょうどいい。デモンストレーションを浴びせてみるか」
　バッドサイエンティストの面目躍如といった所業は、しかしあと一押しのところで中断した。
　弾丸のごとく飛んできた泡が、飛び退った執を追って地面に弾けていく。
「そのリモコン、渡してもらおうか」
「誰だ！？」
　噴射機の影から現れた人物に、執は問うた。
　黒いスーツに、サングラスの女の子。
　いや、それは果たして、ただの女の子なのだろうか。

　ブーツはゴツく、恐らくは裏が滑り止めという泡の実戦仕様。
　極めつけは、左腕の先が銃身になっているという異様ないでだちだ。
　親しいものなら、彼女が旅鴉月詠に似ていると答えたかもしれない。
「私の名前など言っても貴様には無意味だ」
　少女は無慈悲な口調でそう言うと、左腕の銃を執へと向けた。
「私はこの地点を通る者たちを残らず泡だらけにする。貴様も例外ではない。その便利なリモコンを渡せば気持ち三割り増しでバブってやろう」
「スタッフ関係者か？　嫌だと言ったら？」
「バブるのみ」
　瞬間、泡が駆けた。
　左腕から発射された泡が、執の白衣を掠めていく。
「左腕がバブルガンの女だと！？」
「外したか」
　少女は銃身を引き抜き、ゴミ箱に放る。
　そして道路脇へと走ると、新しい銃身を左手で掴んでセットし直した。
「次は脳天で弾けるぞ、泡が」
「く……俺の野望を邪魔させるか！」
　睨み合う二人。
　直後、噴射機が一斉に作動し始めた。泡が飛び出し、周囲の地面を白く染めていく。
「バカな、まだ起動させてないのに……」
「想定より出力が高いな。ありがたいが一体……」
　驚く二人。
　その視界外ではこんなことが起こっていた。

「あら、スタート地点以外にもジェット噴射があるのですね！開けられるものは全部開けていきますわ！」
　左右のろっこん発動で、泡が大量に生み出されていく。