スノーマンズ・ウォー｜リアクション

スノーマンズ・ウォー

●スーパー雪合戦タイム
　林の樹幹裏に背をつけて、八神修は表の様子をうかがっていた。
　ぴょんこぴょんこはねては、雪だるまの集団が迫ってくる。
「林に追い詰めたと思っているようだけど……」
　修はタオルを広げ、雪を包んで一度ぎゅっと握る。
　そしてスリングの要領でぐるぐると回すと、樹幹から身を乗り出して発射した。
「ククク追い詰め――ぎゃみん！？」
　高速で放った雪玉が雪だるまたちを貫き、三体ほど同時に破裂させる。
「ここは障害物の多い、防御に適したベースポイントだ。簡単には攻略できないぞ」
　その横では椿美咲紀が雪玉を握っては置き握っては置きしている。
　その後ろから、須藤清一郎が前髪ふぁさぁってやりながらスライドアウトしてきた。
「サンキューな。可愛い女の子はなにやってても可愛いもんやで」
「須藤、今はそれどころじゃない」
　一応経緯をはなしておくと、美咲紀の付き合いで山を訪れていた所で雪だるまに遭遇。応戦しているとなんかテンションを上げた清一郎が合流してきて、なりゆきで三人組を作ることになっていた。
　清一郎はゲートを開き、雪玉をごっそりと確保。
　別の樹幹へと身を隠すと、美咲紀と修に合図を送ってきた。
「今から三点方式や。絶え間なく雪玉を投げつけて追い払うで！」
「了解ですっ」
　雪玉を握り、ちょいっと身体を乗り出して雪玉を放り投げる美咲紀。
　美咲紀が引っ込んだタイミングで修がすかさず雪玉を投擲。
　修が引っ込んだら次は誠一郎というサイクルである。
　誠一郎に至ってはゲート内にストックした雪玉を素早く取り出せるので連射力がたかく、連係攻撃をはじめてすぐに雪だるまの集団を押し返すことができた。
「追撃だ」
　修はベースの周囲の雪部分を次々に分解。強い凹凸を作って足止めした。
　雪だるまの移動方法が基本的にジャンプなので、足下を崩されると弱いのだ。
　飛び上がる寸前に足下を崩してやれば直接的な足止めになるし、後続の雪だるまを進みづらくずることもできる。
　欠点といえば、自分たちが前進するときに多少面倒になることくらいか。
「別の仲間と合流できたらいいんだけど……」
「出来れば女の子がええなあ……」
　とか言っていると……。
「あはははは！　すげーぶっこわれてるぅ！」
　佐藤瀬莉が雪玉を投げながら、横から殴りつけるように参戦してきた。
「お前は……！」
「佐藤瀬莉。楽しそうなことやってるねっ！　あたしも混ざるよ！　だって、偉い人もいったもん……」
　瀬莉は雪玉を握りしめ、キリッとした目で見得を切った。
「『乗るしかない、このビッグウェーブに』って！」
「誰！？」
　説明しよう。
　ビッグウェーブさんとは新時代的スマートホン発売の際にニュース番組のインタビューに答えていたモヒカンの男で、実は劇団員という軽い身内臭のする――あっちがうこっちじゃない。
　佐藤瀬莉は快楽主義者の小五女子である。
　白いぽふぽふのついた耳当てをつけ、手袋とジャンパーというフル装備までして単身九夜山へやってきたことにはワケがある。
　誰がいったかしらないが、九夜山で雪だるまと雪合戦してるという謎のツイートを見かけた彼女は好奇心を原動力に自宅を飛び出しダッシュで山へ。
　ツイートがされたであろう場所を探してただいま駆けつけたところである。
「このツイートしたの、誰！？」
「えっと……」
　清一郎がそーっと手を上げた。
「ヨロシクゥ！」
　その手を掴んで上下に振る瀬莉。
「じゃっ、あたし雪玉作るね！　どんどん作るから！」
　修たちと同じように樹幹の裏に回り込むと、足下の雪をかき集めておにぎり式にぎゅうぎゅう玉を作り始めた。
　突然の助っ人登場に顔を見合わせる修と清一郎。
「三点方式に補給担当がついた」
「鬼に金棒や。よっしゃ、任せたで！」

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