スノーマンズ・ウォー｜リアクション

スノーマンズ・ウォー

●龍鎌苑と雪だるま
「頼むぜツンツン兄さん！　壁を作ってる間は俺が食い止めぶっは！？」
　早速だが鎌八まもるの顔面に雪玉が炸裂した。
　のけぞりそうになるが、ぐっと構えてこらえる。
「伊達にゴールキーパーやってないぜ。これでもくらいな！」
　足下の雪をすくいあげ、大きめの玉にして放り投げる。
　雪だるまはそれをぴょいんとジャンプして回避した。
　大きければそれだけ当たったときの重量が増えるが、かえって速度やコントロールが落ちる。空中分解のリスクもある。
　とはいえ雪玉をいちいちオニギリみたくにぎにぎしている余裕は無い。
　そうこうしている間に、雪だるまたちが後ろに回り込み始めた。
「おっと、一人で食い止めるのは難しいかぁ？」
　苦笑して集中攻撃を覚悟するまもる。
　だがしかし。
「ぐみょん！」
　変な声をあげて雪だるまが消えた。
　否、大きめの穴に落っこちたのだ。
　一体だけではない、まもるを取り囲もうとしていた雪だるまたちが次々に穴に足（？）をとられて落ちていく。
「だ、誰だこんな穴を掘った奴は！」
「ちかやで！」
　手をドリル見たくした苑下ちかが決め顔で現われた。
　すっごい余談だけど、アニメや漫画でみるドリルってなんで円錐型してるんでしょう。普通円柱型なのに。ちなみに円錐型のドリルを開口ドリルといって小さい穴を更に広げるために使います。ほんと余談でしたね。
　さておき、ぐいんぐいんとドリルを回して見せるちか。
　もうここまで見せられれば『ああ、このコ穴掘りまくったんだな』と分かって頂けると思う。
「ちかちゃん！」
「ちかやで！」
「それもう聞いたから！」
「そこらじゅう穴ぼこだらけにしたったで！　穴ぼこにはまったそばからぼっこぼこにしたってや！」
　そう言いながらも適当な雪を掴んでせいやっと雪だるまに投げつけるちか。
　ぴょんぴょん移動する雪だるまなので穴に落とされると結構弱いようで、ちかやまもるの攻撃で次々に粉砕されていった。
「にしても手ぇつめたいわ。すぐひゃっこくなってまう」
　ちかが手とドリルを口ではーって暖めていると、龍目豪が自分の手袋を脱いで手渡した。
「貸すぜ、ちかちゃん！」
「おおきにな。やさしいなごう兄ちゃんは」
　とか言いながらドリルじゃないほうの手に手袋を器用にはめていくちか。
　よそから見るとドリルの方が冷たそうなのだが、温度とか感じてるんだろうか。本人にしか分からない感覚である。
　一方で豪は、そこらじゅうの雪をかき集めて体重で固めると、掴んでぐっと力を込めた。
「ファイトー！」
　巨大な雪の塊がまるごと持ち上がり、豪はそれを素早く近くの雪壁に積み上げていった。
　豪が力持ちになるんでなく雪の方が軽くなっているので、持ち運ぶスピードや足場問題も気にする必要がない。積み放題である。
　おかげでかなりの雪ブロックが積み重なり、ちょっとした攻撃なら跳ね返せるような防壁ができあがった。
「ちかちゃん、鎌八！　壁ができたぞ！」
　大きな煉瓦ブロックを組むように作られたＵ字型防壁に入り、手招きする豪。
　ちかとまもるは急いでその後ろへと飛び込むと、追って放たれた雪玉攻撃が防壁によって弾かれていった。
「おお、やるなツンツン兄さん！」
「その呼び方は定着したんだな……まあいい、反撃開始だぜ！」

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