The NEKOJIMA M@STER｜リアクション

The NEKOJIMA M@STER

【トワちゃんと行くネコジマ探訪】

　物事には適材適所というものがある。
　トワ・E・ライトフェロゥにとって、その仕事はある意味で適任で、またある意味でまったく不適格とも言えた。

「Good morning ミナサン！　ギョーカイでは昼でも夜でもオハヨーゴザイマスが基本！　トワ、ちゃんと覚えたデス！」
　トワはカメラに向かって元気良くそう挨拶をして手を振った。
　それだけで、テレビの画面の中はぐっと華やかになる。
　明るい天然な幼女というのは、そこにいるだけでテレビの向こうのおじいちゃん、おばあちゃんを和ませる力があるのである。
　何故か、いつもより若干成長しているように見える彼女だが、その本質は何一つ変わっていない。
『いいよ、トワちゃん。その調子で、好きにやっちゃって！』
　この企画を提案したプロデューサーがカンペを持って、トワにそう指示を飛ばす。
　それに、トワもまたにっこり笑って頷き、本当に好き勝手始める。
「この番組は　outlet mall とかー　cat load　とかー、ネコジマ spot をトワが実際に歩いて紹介するコーナーデス！」
　一応、番組のコンセプトには沿うつもりではあるらしい。
　というか、天然系アイドルの彼女にしては珍しくちゃんと仕事が出来ている。
　これはいけるんとちゃうか？　といつもトワの天然ぶりに引っ張りまわされているスタッフ達も思わず顔を見あわせる。
　しかし、そうは問屋が卸さない。
「今日の予定は星ヶ丘 station えーきからマリーナを見ながらステッラ・テッラ・コリーナに入って星ヶ丘教会を参堂してホースクラブを訪問するマス！」
　と、トワは道順もちゃんと覚えている。
「イソラ・ガレッジャンテが見えるデスネー。此処から海を見ながら行けばステッラ・テッラ・コリーナデス」
　と、頭の中で地図も描けている。
「とーだいデス！　bigデスネー。ねこが日向ぼっこしてるマス」
　なんと、無事にエノコロ岬にまで辿り着く。
　このままいけば、ちゃんと星ヶ丘教会やホースクラブについてしまう。いや、本来はそれが正しいのだが。
　しかし、

「Oh？　何故か、cat road（商店街）に着くマス」

　やはりトワは道に迷った。気がつけばカメラマンもプロデューサーもそこにはいなかった。
「まあ、前々回、行こうと思っていけなかった場所デスからＯＫ！　こんなこともあろうかと持てきたカメラでトワ視点で紹介するマス」
　そんな感じで、撮影は順調（？）に進んでいく。
「Oh？　今度は、ねーこーおーんーせーんー！　どうやって此処まで来たかトカ？　それはトワにもわかるかねるデス」
　はしゃぎつつ、ちゃんと視聴者向けのコメントを入れるあたり、まさしくプロの犯行であった。
　そして、
「折角なので入って帰るマスケド、カメラは入るないデス。残念！」
　そこでカメラのスイッチを落し、トワはひとしきりまったりバスタイムを楽しんだという。

　なお、その頃、テレビでは『現在、トワちゃんはどこにいるでしょう？』というクイズ形式のコーナーで場が繋がれ、それはそれでなかなかに好評であったとか。