スクール水着は世界を救う｜リアクション

スクール水着は世界を救う

【２】

　そう、中には異変に気づいていない人もいるのだ。
　羽生碧南は自室の二段ベッドの下でゆっくりと目を覚ました。
　今日はバスケ部の朝練がないのでのんびり準備をして学校に行けばいい。
　寝間着代わりのロングＴシャツを脱ぎ、おろしたてのスク水を着る。このフィット感がちょうどいい。
　そのまま桜花寮の食堂で朝ごはん。寮母のトシコさんにおはようを言って、しっかりごはんを食べた。
「今日も朝ごはんおいしいな」
　食事を終えた彼女は歯磨きと洗顔を済ませ、学校に。
　いつもと変わらない、いつもどおりの朝である。
　ただ、少しだけ違ったのは時々、不思議そうに自分を見てくる人がいることだ。
「寝癖かな？　それとも格好が変？」
　なんの変哲もないスク水だし、肩にはタコも乗ってる。
　おかしいところは特にないけど……と首をかしげる彼女。
　しかし、ほんのり彼女は気づいていた。
　スク水を着てる人とそうでない人がいることに。
　けれども、何がおかしいのかはよくわからない。
　ちょっとだけ不思議に思うのは、冬なのにスク水でも寒くないってことぐらいだった。
「ま、いっか」
　多分、思い出せないってことは大したことじゃないのだろう。
　体育会系特有のさっぱりした思考の元に、碧南は深く考えるのをやめた。

　そして、こちらもそのひとり。
　音海なぎさは通学路を自転車で飛ばしていた。
　もちろん、服装は制服……ではなく、スクール水着だった。
　一見すると、スク水姿の女の子が自転車こいでる？
　と、そう思えなくもない様子だが、なぎさはれっきとした男の子である。
　風変わりなところのある彼は、寮では女性物の服を着たりしている。
　女性の格好に慣れているせいか、風貌が可愛らしいせいか、さほど違和感はなかった。
　とは言え、学校に行くのにさすがにそんな格好では行かない。
　今日も普通に寮を出てきたはずなのに……。
　何か変だなー、と彼も薄々何かに気づいていた。けれど、なんなのかはよくわからない。
「……まあ、この島で変なのはいつものことだしなー」
　なんだか、今日はなぎさって言うよりもナギちゃんっていう気分だなー、と思った。
　時々、スイッチが入ると女性っぽくなってしまうなぎさ。
　別にスイッチが入るようなことをしていないのに、何故か今日はスイッチが入ってしまった。
「どうしてだろうねー？」
「バカタコー」
　不思議に思いながら、腕に絡みついてるバカタコをつっついた。
　まさにその腕にへばりついてるものこそが、不思議の原因なのだが。
　残念ながら、なぎさは気づきそうにもなかった。

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