【バレンタイン】冬の赤いチューリップ｜リアクション

【バレンタイン】冬の赤いチューリップ

　職場と住まいの旧市街を行き来していると、真境名アリサは思う。
（２月はどの業界も閑散期ね……）と。
　クリスマス商戦——、いやこの頃はハロウィンの時期から始まり、やれご馳走だプレゼントだと消費者の購買意欲をそそりながら年始まで駆け込むと、そこからは一気にスローペース。
　特に小売、宿泊、飲食や観光などのサービス業界は、ここへくると客足が急激に途絶える為、割引や団体客の誘致などで少しでも需要を増やそうと必死になる時期だ。
　観光地としても有名な寝子島が、バレンタインデーに合わせて大規模なイベントをうったように、アリサの勤め先も２月１４日に勝負をかけていた。
（……いつまでもやってられる仕事じゃないんだけどね……）
　自分の仕事に対して、冷静な目線でそう考えているものの、それは今は別の話だ。
（さあ、今日はチョコをばらまくわよ——！）
　木天蓼市内の水着ガールズバー『ジュエル』は、きっと乱痴気騒ぎになるだろう——。

＊　＊　＊　＊　＊

　ガールズバーとは、カウンターに立ってサービスるのが女性バーテンダー（バーメイド）のショットバーの事だ。
　アリサら店員の纏う衣装は水着と扇情的ではあるが、風俗店ではないので客の隣に座りはしない。あくまでカウンター内で、カクテルや水割りを作って提供するのが彼女たちの仕事だった。
　そんなサービスの中にバレンタインを絡めるとなると、やはりチョコレートがメインになる。
　この日は酒を提供する際に、チョコレートを手渡しするおまけをつけた。
　おまけと言っても客はそのサービスを目当てにきてくれるのだからと、丁寧に包装された、大人に満足して貰える商品だ。
「甘いものが苦手でしたら、代わりにおつまみをご用意しますから、お気軽に仰って下さい」
　アリサは愛想よい笑顔でこう言葉を添える。

　
　夜も深まっていくと、客の盛り上がりも高まり、アリサの気分も乗ってきた。
「アリサちゃんアリサちゃん！」
　客のリクエストに促されて、アリサはカウンターを出て行き、フロアにあるステージに立った。
　円形のステージの中央には、真っ直ぐ立った柱が固定されている。
　アリサらがここで披露するのは柱に絡みながら踊るセクシーな『ポールダンス』だった。
　激しいビートに合わせて、モデルのように整った体型をしなやかに、アクロバティックに動かし、誇示する。
　ドキッとする程魅力的な印象とは裏腹に、実際は筋力とバランス力を必要とする『運動』なので、アリサの首筋にはうっすらと汗が浮かんでいる。
　音楽は最高潮だ。さあ仕上げをしようと、アリサは片足と片腕で美しいポーズを維持しながら、客席へ向かって小さなチョコレートをばらまいた。

「ハッピーバレンタイン！」

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あとがき

担当マスター：東安曇
ファンレターはマスターページから！

『【バレンタイン】冬の赤いチューリップ』にご参加頂き有難うございました、執筆を担当致しました東安曇です。

ステージパフォーマンスにご参加頂いた皆様、お仕事をしていらっしゃった方、お疲れ様でした。
観光に来てくださった皆様、バレンタインデーの旧市街と九夜山は如何でしたか？
おデートをしていた皆様、今後の展開が楽しみですね。ふ、ふ、ふ。

気分は２月の真ん中にどっぷり浸かり、現実「今何月だっけ？」と混乱する勢いで執筆したリアクションです。お楽しみ頂ければ幸いです。

（運営部より）

バレンタインのその他の地域のリアクションは、鋭意制作中です。
気長にお待ちいただければ幸いです。

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