雑貨店memoria～波と風のシークラフト～｜リアクション

雑貨店memoria～波と風のシークラフト～

「みんな、楽しそうだったわね。成功してよかった」
　戸口で全員を見送って、最後のひとりの影が路地から消えたのを潮に密架は店内へ戻る。密架がそうしている間に２階の後片付けを終えた喬は、今度は店じまいにとりかかっていた。
　掃き掃除をして、出たゴミを表に掃き出そうと戸口のほうへ体を向けた結果、密架と向き合うことに。その顔。何か言いたそうだと察しはついたが。
「邪魔だからどいて」
「もう。
　きょうのあなたの態度、いつも以上にひどかったわよ。友達だからって、お客さまということを忘れちゃだめ」
　言いながらも、密架は脇に身をずらした。横を通り過ぎてゴミを外へ掃き出したあと、喬はそのまま表の掃除に移ろうとする。
「聞いてる？」
「はいはい」
「生返事！　ちゃんと理解してるの？」
「はいはい」
　振り返りもしない態度に密架ははーっと重い息を吐いて、眉間に指を添えた。
（これって、本当にリハビリになってるのかしら……）
　すっかりものづくりに夢中になって、対人能力の壊れっぷりがさらに悪化しているような気がしないでもない。が、とにかくこうして店のことはきちんとしているし、学校にも毎日通っている。友達もできたようだ。だから、以前より改善されているはず。……たぶん。
　そろそろ本土に一度帰って、診察を受けさせたほうがいいんじゃないかと思案しながら郵便受けを覗いた。夕刊と、おきまりのダイレクトメール。それらをまとめて取り出したとき、隙間から白い封筒の角が見えた。
　差出人は『中山　正樹』。
　そっと肩越しに振り返り、喬を見た。だが宛先は息子の彼でなく、密架になっている。少し考えた末、その場で開封した密架はその内容にはっとし、ためらうように目を泳がせたあと、結局喬を呼んだ。
「なんだ？」
「正樹さんから手紙がきたわ……わたしに」
　ぴくりとチリトリを持つ手が反応した。立ち上がり、振り返る。面に浮かんでいるのは皮肉げな、ゆがんだ冷笑だ。
「ふーん。それであいつ、何だって？　おれの報告は信用できないから、おまえに問い合わせてんのか」
「そうじゃなくて……春休みに、来るそうよ」
「あいつが？　あいつだけか！？　まさか――」
「違うわ、違う。おちついて。貴子さんは来ないわ」
　一瞬で殺気立った喬をなだめつつ、密架はためらった。この先を聞くと、さらに喬は興奮するんじゃないかと、心配で。だけどもう言うしかない。ふたりでここへ来ることを話し合ったとき、隠し事は一切しないと約束している。
「紗那ちゃんよ。学校が休みになったら、ここへ来たいって言ってる、って……」
　喬は思いもよらない名前を聞いた驚きに口をあんぐりと開け、目を見開いて。たっぷり１分はその状態で硬直したあと。

「なんだってえ！！！！！」

　叫んだ。

『波と風のシークラフト　了』

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あとがき

担当マスター：寺岡志乃
ファンレターはマスターページから！

こんにちは、またははじめまして、寺岡といいます。
当シナリオにご参加いただきまして、ありがとうございました。

公開がこんなにも遅くなってしまいました。お待たせてしまい、大変申し訳ありません。
いろいろと周囲に変化があり、わたし自身思うところもあって、なかなか執筆に時間を割きづらくなってきています。
もちろんそんなことはプレイヤーの皆さまには関係のないことですから、ただただ謝罪するしかないのですが……。

少しお時間をいただきまして、きちんとできるようになったと思えるようになってから、シナリオを出したいと思います。
でないとまた皆さまにご迷惑をかけることにしかならないでしょうから。

次のガイドがいつになるか分かりませんが、なるだけ早く出せるようにしたいと思います。
そのときはあらためてよろしくお願いいたします。

それでは、ここまでご読了いただきまして、ありがとうございました。

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