【スキー＆スノボ合宿】白銀の世界へようこそ！｜リアクション

【スキー＆スノボ合宿】白銀の世界へようこそ！

●スタイリッシュに憧れて

「派手に楽しむぜ！」
　スラローム（回転競技）やジャンプで体を一通り慣らしきった七峯亨は、急斜面のコースに移動した。
　前方がクリアになったのを確認次第、目一杯に加速してスーパーＧ（スーパー大回転）のスタイルに。
「いざ、スピードの世界へ飛び込もう！」
　加速のたびに強く硬く吹き付ける風と、高速のまま目一杯にターンするＧの感覚。
　時折、予想より硬い雪にボードが叩かれる衝撃と寒さに反して熱の篭り火照る体。そして、止まる時の雪を削る音。
　それらは一度脳に染み付けばすべてが癖になり、幾度と数えるのも忘れ、病みついたように身に染みた感覚を繰り返す。
「かっこいいな」
　１日目にみっちり上級者コースでより難易度の高い滑り方やスキルを学び、スノボの空を舞う感覚にハマった羽生碧南は今日は一日中スノボをやると決めた。
「やるからには、彼みたいにスタイリッュに滑りたいわね」

　中級コースに来たばかりの伊織源一と尾鎌蛇那伊は、高野先生にみっちりスノボの基礎やフォーム等でしごかれていた。
「カカカ！　そんなへっぴり腰じゃ七峯みたいにカッコ良く滑れないぞ！　重心に気をつけろよ～」
　指導は厳しかったが、コツを掴むのが早い２人の滑りは次第に様になってきた。
「……む……スノボの道は厳しいものだ」
「それより、高野先生のほうが厳しいわよ。もう少し手加減してもいいんじゃないかしら？」
「……愛の鞭と思えば良い」

　休憩中、源一と蛇那伊、碧南は滑り終えた亨に話しかけた。
「……見事な滑りだ」
「尊敬しちゃうわ。スピードを出すコツ、教えてくれない？」
　感服する源一、尊敬と憧れの眼差しで亨を見る蛇那伊。
「滑りはカッコイイけど、スピード出しすぎじゃない？　あなた、スピード狂？」
　碧南の「スピード狂」という言葉に対しては、そう悪い言葉じゃない。
「スピードは楽しいもんだぜ？　何かあればただでは済まないリスクもまた、スピードの魅力。だから俺はリスクのカウンターとして己のリソースを吐き出し、燃やし続ける。だからこそ楽しい。そう思わないか？」
　クール＆スタイリッシュな感じの滑りを信条とする亨にとって、スピード狂というのは褒め言葉のようだ。

　３人と別れた時、もっと滑るかとリフト乗り場に向かった亨は雲行きが怪しくなってきたのを感じた。
「麓が見えているうちに滑るか」
　滑る方向と明かり、ポールなど目印を定めてからロッジまで真っ直ぐ、全速力で滑降して戻り遭難を避ける。
「途中で吹雪くなら上等！　こういうエクストリームな状況こそリスクジャンキーの大好物さァ！」
　高々と笑いながら、加速し、かっ飛ばしながら帰路に。
（そういえば、スノボがプロ級のキャラもいたっけ。彼、そのキャラに似てる……）
　高笑いを周囲に響かせる亨を見た碧南は、昨日のナイターで脳内再生された乙女ゲームのことを思い出した。
「……吹雪かないうちに練習に戻ろう。高野先生が遅い、と怒るぞ」
「そうね」
　中級新人、早くこーい！　と高野先生が大声で源一と蛇那伊を呼ぶ。
「私も天気が悪くならないうちに、おもいっきり滑るわよ」
　もっと上手くなるんだから、と意気込む碧南も再び滑り始めた。
　高野先生のスパルタ指導、練習熱心、努力家、武術つながりの２人はめきめき上達した。
「上級レベルに近くなってきたな。私が指導することはもうないくらいだ。後は自由に滑っていいぞ」
　私も滑るぞ！　と高野先生は今日も亨に一緒に滑ることに。ライバル意識が芽生えたようだ。
「七峯、今日も一緒に滑るぞ。勝負だ」
「いいぜ。どっちがよりスタイリッシュか勝負しようかないか」

　高野先生と亨の滑りは、ゲレンデにいる客には「プロ？」と思われ、生徒達は憧れの眼差しで見られている。
「おぉう、さすが有紀ちゃんセンセーハイレベルなのだ、そこに痺れる憧れるっ！」
　負けないのだ！　と後木真央も天候が悪くならないうちに滑りまくる。