旧市街のお化け屋敷｜リアクション

旧市街のお化け屋敷

　　　エピローグ

「小百合さーん、これどうすればいーい？」
「あらあら、そんな重いもの、女の子が持っちゃいけませんよ」
「持てないようなら、俺が持つよ」
　週末、円と刀は家の掃除を手伝いに来ていた。捨てるに捨てられなかった粗大ごみを外に運び出し、草むしりをする。
「わたくし、イングリッシュガーデンを作るのが夢ですの」
　円と刀は絶句し顔を見合わせた。
「……無理かしら？」
「どうかなあ？」
「いや、まあ頑張ればそれっぽいのぐらいは……」
「ですわよね！？」
　期待に満ちた目の小百合に、それは無理じゃないかと否定するのは、躊躇われる二人だった。
「差し入れだぞー」
　買い出しに行っていた者たちが戻り、紙コップを配る。我が家が急に賑やかになり、小百合は目を細めてにこにことしていた。

「混ざりたいか？」
　ぼーっと庭を眺めている巧に、修は声をかけた。ここからでは外の様子は見えないが、声は聞こえる。実に楽しそうだ。今は、新しい表札をかけよう、と話している。
「……別に」
「終わったら、一緒に掃除に行こっか」
　美咲紀はプリントの枚数を数えた。「あと五枚。これで試験範囲で今出てる分は終わるから」
　巧は顔をしかめた。
「大丈夫っ。シューくんがいるから！」
「その通り。ちゃんと授業についていけるようにするし、東門のろっこんについての検証も近いうちにやろう」
　余計なお世話だ、と言わんばかりに巧は更に顔を歪めたが、美咲紀も修も気づかない。
「あ、ジュースもらってくるね！」
　美咲紀が思いついたように部屋を出て行く。
　結局、お化け屋敷はただの誤解だったな、と修は思った。
　引き籠りの巧と妙な姿の小百合――彼女はあれが普通らしい――、誰も住んでいないはずの家に誰かがいる、という思い込みから起きたことだ。当の二人は、この家がそんな風に呼ばれていたことも知らない。
「大山鳴動して鼠一匹、ってところか」
「鼠！？」
　ぼそりと呟いた言葉に、巧が慌てて立ち上がり、修はつい笑っていた。
「違う違う。そういう意味じゃない」
　巧はまだ心を開いてくれてはいない。かつての友人関係が、相当酷かったのかもしれない。
　だが、修は急がなかった。彼だけではない。他の人々も、そうだった。
　時間がたっぷりある。付き合いは、始まったばかりなのだから。

　余談だが、るるかの撮った写真は、魔除けとして秘かに流行ったとか流行らなかったとか。

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あとがき

担当マスター：泉楽
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ご参加ありがとうございました。「旧市街のお化け屋敷」リアクションをお届けします。
今回の話は、割と日常系でしたが、本当の怪異かどうか悩まれた方も多かったと思います。その意味では拍子抜けだったかもしれませんが、一番最初ということで、こんな感じになりました。
同時進行の出来事が重なっているので、少々読みづらいかもしれません。ご容赦ください。

幽霊の正体見たり枯れ尾花。といった内容で、引き籠りだった東門巧を引っ張り出すことに成功しました。が、彼はまだ心を開いていません。追い追い、親しくなっていければ……と思っています。その時はよろしくお願いします。
それではまた、お会いしましょう。

なお、現在判明している東門巧のデータです。
１６歳。寝子島高校普通科１－３組。

・ろっこん名：缶詰
・発動条件タイプ：Ｒ型強化タイプ
・発動条件：他人から攻撃を受ける
・能力タイプ：強化タイプ
・能力の内容：体が硬くなる（攻撃を弾き、ダメージを受けづらいが、動けない）

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