オニンピック in 魔界｜リアクション

オニンピック in 魔界

○フェンシング自由型

「フェンシング自由型？　自由型じゃないのもあるんだ？」
　みつびが首を傾げる。
「自由型、とあるのは武器を何でも使って良いからだそうだ」
　サキリが説明した。
「もはやスポーツと呼べるか怪しいけど、こういうのも地獄らしくて良いね」
「気をつけて……頑張ってね」
「サキリなら大丈夫だろう」
　夏朝や修も応援に来ていた。

（予選は雑魚鬼ばかりだし余裕勝ちかな）
　サキリは寝子島代表としてマチェットの二刀流で戦った。
　マチェットは山刀で、軽量で疲れにくいしナイフに比べると折れにくい。
　刃物の扱いにかけては人後に落ちないサキリ。地獄での真剣勝負も経験している。
　敏捷さを生かした戦いで、予選はあっと言うまに勝ち上がった。
　本選は流石に手強く、剣だけでなく蹴りや体術を仕掛けてくる強豪の鬼達と全力で渡り合った末、見事に勝ち抜いた。
　
　そして迎えた決勝戦。
　対戦相手の名を見てサキリは目を見張った。
「茨木童子……あの伝説の鬼か」
　平安時代に京都を荒らし回ったというが、そんなに長命なのだろうか。
　立ち上がった相手の姿を見てサキリは二度驚く。
　白い肌に赤い長髪、赤い瞳の美少女がそこにいた。
　髪から覗く角がなければ、とても鬼とは思えなかった。
（見た目に惑わされず僕の全ての技をもって戦おう）
「はじめ！」
　これは流石に強い、と向かい合った瞬間感じた。
　少女が放つ静かな殺気に、血が湧きたつのを感じる。
　酒呑童子の獲物は日本刀だった。
　サキリは二本の刃を操り、蹴り技や体術も駆使して迫るが、酒呑童子の身のこなしはなかなかサキリを寄せ付けない。
　間一髪躱した刀は、サキリの髪を数本パラパラと切り落とした。
（今までの鬼とは格が違う。大江山で酒呑童子の副首領をしていたのは伊達じゃないという事か）　
　これは切り札を使わざるを得ない。
　酒呑童子の額に美しい汗が光る。向うもこれまでの戦いで疲れているはずだ。
　サキリは、空間を切り裂くイメージを浮かべ、ろっこん『斬空赤刃』を発動させた！
　茨木童子の懐に転移、輝く赤い刃はためらわず細い腕を捉えた。
　刹那。赤い血しぶきが舞うのをサキリはスローモーションのように眺めていた。
　かつて渡辺綱がしたように、サキリは鬼の腕を切り落としたのだ――
　観客席から、爆発するような歓声が巻き起こった。

「とても楽しい勝負が出来た、ありがとう」
　血の染みを顔につけたままの少女に、サキリは心から敬意を表し礼を言った。
「こちらこそ……次は、負けない」
　酒呑童子は口の端を吊り上げて笑んだ。
　血は飛び散っていたが、切り落とされた手はすぐに医師の手により包帯で元通り固定されていた。
　彼女は逆の手でそれを支えると、自分の足でしゃんと歩いて競技場を去った。
「おめでとう！　すごかった！」
「ケガしてない？　……おめでとう！」
「おめでとう。すごい勝負だった。流石だな」
（流石に激戦で疲れたな……少し休むとしよう……）
　駆け寄ってくる仲間たちの賛辞を受けながら、サキリはそう思っていた。
　

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
地獄らしい競技の数々、楽しませていただきました。
スポーツ知識がなく、少々検索に手間取りましたが間違っているところがありましたらごめんなさい。

初めて文字数を超過しました。普通の日常が舞台ではなかったので説明が必要だったからかと思いますが。
ちょっと嬉しい体験でした。
次回は描写量が少ないプレゼントシナリオですが、その後はなるべく量を増やしていけたらと思います。
それでは、またのご参加をお待ちしております。

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