フォンデュパーティ！｜リアクション

フォンデュパーティ！

●仲良くあーん

「おお……本当にこれ、無料でいいのかい！？」
　ウルフカットの２年生ロベルト・エメリヤノフは目を輝かせた。
「ねえ獅子目！　すごいよこれ！　高級品ばっかりだよ」
「そうか？」
　並べられた高級具材にはしゃぎつつ、ロベルトは傍らの赤銅色のポニーテールの１年生獅子目悠月に話しかけた。
　榛色の瞳、煙るような長い睫。絵に描いたような美少年である悠月のほうは高級食材には反応しない。
　並べられたゴーヤやきゅうりに、
（なんでこんな物があるんだ？）
　と訝しげな顔になっていた。
　悠月の薄い反応を不思議に思ったロベルトは、ふと何かに気づいた顔になった。
「……あ、そっか、獅子目には日常だよね。いいなぁ、お金持ち……僕もなりたいね」
　悠月は星ヶ丘寮生。良家の子息なので高級食材にも特に感慨がない。
「チョコレートフォンデュか、こういうのも悪くないな」
　呟く悠月を見ながらロベルトは思う。
（しかし……やっぱりこう……美少年に対してやりたい……あーん、を！　そして出来ることならされたい！）
　悠月の好きなものは何だろう？　
　迷いつつ、とりあえずロベルトはリンゴをチョイスする。
「こういうの見るといつでもやってみたくなってね……美少年に！　アーン！」
　チョコをつけたリンゴを目の前に差し出された悠月は、目を瞬かせる。
「何だもてなしのつもりか？　いつでも……ふーんなるほど？」
　軽く笑って、
「常習犯？」
　と尋ねた。
「うっ……いやだからといって獅子目が特別じゃないわけじゃないんだよ！」
　うろたえるロベルト。
（ふふ……食材ではしゃいだりの時もそうだが、ロベルトの反応は素直でいいな。ついからかいたくなる）
　悠月は　反応を伺いながら余裕の表情だ。
（もうちょっと踏み込んでみるか？）
「ふーん？　で、もっと分かりやすく言うと？」
「君も特別だよ……！！　ほ、ほら！　チョコが垂れてしまうよ」
　と、焦りながらロベルトは、悠月にチョコフォンデュを差し出す。
　嫌がられるかな？　とも思ったが、悠月は思わぬ行動に出た。
　ずいっと差し出されたフォンデュに、ロベルトの手首を掴んで自分からあーんと迎えに行ったのだ。
「自分から迎えてくれるなんて嬉しいよ……！」
　ちょっと動揺しつつロベルトは、いけるかも？　と思う。
　悠月のほうでは、
（少しからかい過ぎたかな？）
　と思っていたが。
（……ここは友人から教わった思わせぶりテクを使わせて貰おうか！　あわよくばワンチャン！）
　ロベルトはわくわくしながら、
「あと……その……ねえ……」
　と自分の唇をツンツンつつき、思わせぶりに迫ってみた。
「……っと、なんだロベルト？　口？」
　言いたいことは察した悠月だが。
「ふん、言い方がダメだ。もっと取引先に言うみたいに言え」
　睨みをきかせて高飛車に言い放った。
　直情的で強情で自信家で俺様な性格の悠月には、それがよく似合っていた。
（やっぱこうなるよね、知ってた！）
　ちょっとがっかりするも、ロベルトはめげなかった。
　むしろこれはこれでご褒美かもしれない。
「僕にもアーンしてください……」
「よろしいっ」
　ちょっと偉そうに言った後に、悠月はふわっと笑った。
「好きな食べ物をもってこい。どうせなら好きな物の方がおいしく食えるだろう？」
「ありがとう！　よーし、何にしようかなー！」
　はしゃぎながらいちごや高級パンを選ぶロベルト。
　悠月は微笑みながらその様子を眺める。
「これと、これも、お願いします！」
　鼻息荒く、しっぽを振らんばかりに戻ってきたロベルトから受け取ったいちごを悠月はチョコに浸した。
「あーん」
　至福の表情でロベルトが大きな口を開け、フォークごといちごに飛びついていった。
　