フォンデュパーティ！｜リアクション

フォンデュパーティ！

●ホスト部のおもてなし

　寝子島高校のセレブな生徒たちが暮らす星ヶ丘寮の一室。
「男子が女子にチョコを振る舞うパーティか～。いいね！　ホスト部らしいイベントが出来そうじゃん♪」
　軽くチャラい雰囲気のホスト部部長、八城昌也が満足そうに頷く。
「だろう？　ばっちり宣伝してるからよろしく頼むよ、やしろん」　
　こちらもチャラくて爽やかな、ホスト部メイトの八十八旗信彦が言った。
　最近猫様ゲームの影響で金欠な信彦にとって、星ヶ丘でのイベントは財布を気にせずレディをおもてなしする妙案であった。
「星ヶ丘寮の男子も手伝ってくれるみたいだし、ここはウチらがリードしてお手本にならないとね！」
　張り切る昌也。
　かくしてフォンデュ・パーティの幕が開く。

　芸術科１年の桜月は、一人で服のデザイン画を描いていた。
　いつものメイドは用事があって休みだったのだ。
（いい感じに集中できて満足いく結果だけど少し疲れた、食堂にお茶を飲みにいこう）
　が、食堂に向かう途中いい匂いが漂ってきた。
「チョコレート？」
　匂いに釣られて扉を潜ると、何かのパーティー会場のようだ。
　中央にはチョコが湧きだす泉が設置されていた。
「いらっしゃいませ、フォンデュ・パーティへようこそ！」
　スーツを着込んだ昌也たち男子が出迎える。
「フォンデュ・パーティ？」
　話を聞いて月は言った。
「なるほど、２月のバレンタインデーに先駆けてホスト部がおもてなしをしてくれるということか」
「そういうこと♪」
　実は１対１で女性を前にするとビクビク怯えてしまう昌也だが、今は周囲に他のホスト部の生徒がいるので大丈夫だ。
「折角のおもてなしだ参加しよう。少し疲れていたし」
「その疲れ、しっかり癒させていただくよ♪」
　笑顔のホスト部員たちに微笑みを返し、月はテーブルについた。
　さっそくイチゴやバナナをチョコにつけ食べ始める。
「うん美味しい、素材の果物もいいけどこのチョコは何処のだろう？」
「チョコファウンテン・フォンデュ専用の高級チョコです。カカオバターがたっぷり入ってるそうで」
　あらかじめ聞いておいてよかった、と思いながらすらすら答える昌也だった。　
「なるほど、だからこんなにまろやかな味なんだな」
　口の中に残った甘みを流すよう熱めの紅茶を飲んではまた食べる。
「……はあっ、美味しいな」
　思わず幸せそうなため息が出る。

　三宅葉月は、絵画専攻の芸術科２年生だ。
　休みの日は寮の外へ出て気ままにスケッチに出るか、アトリエで絵を描くかのいずれかを習慣にしていた。
　この日は前者のはずだったが、出かけようとしたところで。
「葉月ちゃん、フォンデュパーティはどうだい？」
　と信彦に声をかけられた。
「フォンデュパーティ？」
　知り合いというほどではないが、信彦が星ヶ丘寮生であることは知っている。
「チョコもチーズもお好み次第で、お勧めの食材が揃ってるんだ。キミに癒しのひと時をお届けしたいな」
　少し考えた葉月は、
（まあ、いいか）
　と、誘いに乗ることにした。
「それじゃ参加させてもらうわ」
「よかった、こっちだよ！」
　信彦に案内され会場へ向かったのだった。
（まずは定番のフルーツ類からかしら）
　チョコレートの甘さと具材の触感と味との絡みをよく堪能する。　
「こっちにはパン、ナッツ類、お菓子類があるよ！」
　先客の剣崎エレナがお菓子を食べていた。
「チョコ……コロネ……」
　エレナは何か思い出したように眉間にしわを寄せていたが、葉月を見て優雅に微笑みかけた。
「こんにちは。後でバレエを披露するから見ていってね」
「そうなの……楽しみにしてるわ」
　エレンに会釈してパンを取りに向かう。　　
　最初のうちは普通のものを食べていた葉月だが。
「ちょっと変わったものも食べてみたいわね……」
　チーズフォンデュ用だろうか、皿に並んだ野菜を見ながら考える。

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