寝子島に雪が舞う｜リアクション

寝子島に雪が舞う

　
「修ちゃん討ち取ったりなのだ～……ってオヤ？　やべぇのだ、うっかり他の人まで討ち取ったのだ！？」
　真央は修が木の陰から出てくる隙を狙っていた。
　しかし実際に出てきたのは修ではなく逢莉だった為投げた雪球は逢莉の顔に当たってしまったのだ。
「いつまでも同じ木の影に居るわけないだろ」
　修は出てくると逢莉の顔についた雪を手で払ってあげた。
「大丈夫なのだ？」
　心配する真央、けれど当てられた逢莉はケロッとした表情で。
「なかなかのキョウケン、お見事です！」
　これには真央も笑顔で返す。
「良かったのだ！」
　そんな二人を見ていた修が真央にそろそろ戻ろうと提案する。
　すると真央は何かを思いついたようで。
「ＮＭＲを多角的に検討するには人の目がたくさんあった方がいいのだ。ゆえに！　皆もお菓子を食べに来るといいと思うのだ～！」
　体を動かして汗をかくほど暖まったものの服は溶けた雪でびしょびしょだ。
　このままだと恐らく風邪を引いてしまうだろう。
　皆も真央の提案に乗り、新聞部の部室へと向かった。
「ふぇぇぇ、部室の中があったかいのだ極楽なのだ～」
　修は体操着に着替え濡れた服はエアコンの近くに干しておいた。真央は着慣れたいつものジャージ姿だ。
　真央は残っていたお菓子を持ってくるとテーブルの広げた。
「皆も食べるといいのだ！」
　そう言って真っ先に食べ始める真央。
「たぬもお菓子あるのー！」
　菊乃も持参したお煎餅を机の広げ始めた。
　修は電気湯沸し器でお湯を沸かし、人数分のコーヒーとココアを淹れた。
「暖まるっすねー」
「暖まるのだー」
　椅子に座り寛ぐ一同、杏は窓際で外を見ていた駿に声をかけた。
「杏食べるかい？」
「えと……もらいます」
　コーヒーを飲みながら駿は渡された杏を食べた。
「君はどうしてここに来たんだい？」
「たまたまかな。雪が降ってて物珍しさに歩いてたら皆を見かけて。そういうあなたは？」
「ふぅん……俺も意味なんてないけどね！たまたま通り掛かって声が聞こえたから」
「皆考えることは同じってことか」
　駿が後ろを振り返るとそこはちょっとしたお菓子パーティのようになっていた。

　プリントの仕上げを終えた寝太郎が部室の前を通りかかったのも丁度その頃だった。
「甘い良い匂いがする。それになんだか賑やかだな……」
　甘い物の誘惑に逆らえず中を覗いてみると先ほど外で雪合戦をしていた者達がいた。
「美味しそうだなぁ……」
　時刻は昼を過ぎている。ずっと作業していてお腹も空いていた。
　そんな寝太郎の視線に偶然真央が気づいた。
「誰かいるのだ？」
「あ、えっと……」
　勢い良く開け放たれる扉、真央は寝太郎を見つけると。
「丁度良いのだ。君も入るといいのだ」
「良いのかなぁ」
「これが縁でＮＭＲ仲間や新聞部員が増えるかもなのだ辛抱遠慮なのだ♪」
「コーヒーとココアどっちが良い？」
「じゃあココアで！」
　修の問いに笑顔で応える寝太郎。
　プリントを忘れて散々な一日だと思っていたけれど、こうして最後は楽しいこともあった。
「早起きして良かったなぁ」
　寝太郎は小さくそう呟いたのだった。

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