寝子島に雪が舞う｜リアクション

寝子島に雪が舞う

　新聞部の部室では後木真央がＮＭＲ（寝子島ミステリーツアー）の編集を、八神修が紙面のレイアウトを行っていた。
「うっわ寒いと思ったらまた降ってきてるのだ！」
「昨晩からまた少し降ったみたいだな」
　暖かい飲み物を飲みながら窓の外を眺める二人。
　ふと、真央がこんなことを言い出した。
「寒いと外に出たくなくなるけど雪は別なのだ！　修ちゃん修ちゃん、ちょっと休憩して雪合戦しようなのだ！」
「そうだな。休憩を兼ねて遊びに行くか」
　朝から座りっぱなしで作業をしていた二人は気分転換も兼ねて少し体を動かすことにした。
　外に出て景色を見ながらぐっと伸びをする修。するとぽすっと何かが頭に当たった。
　見るとそれは真っ白い雪の塊、どうやら真央が投げた物のようだ。
「ふっふっふ～、同じ新聞部とはいえ負けられない戦いリターンズなのだ」
「ふふ、そうくるか」
　修は腕まくりをすると雪球を作り素早く　真央へと投げ返す。
　雪球は綺麗な放物線を描き、そのまま真央の顔へ当たる。
「わぷっ」
　真央が雪を払いのけている間にも修は走りだしていた。
「遮蔽物遮蔽物……お、校庭外周の樹木が丁度良いな」
　そうして木の影に身を隠す修。その後を追いかける真央。
「修ちゃん覚悟するのだー！」
「悪いが黙ってやられる俺じゃないぞ」
　そんな二人の楽しそうな声に皆が続々と集まってきた。
「まあ、雪合戦！　戦場の熱い戦いですね！！　わたくしもいれてくださいませ！」
「自分もやるッスよー！」
「たぬもたぬもー！」
　突如始まった雪合戦大会。
「面白そうだな。俺も混ぜてもらおう」
「snowball fight！　年下の子が多いみたいだけど、俺は手は抜かないからね！」
「楽しそうなことしてるね」
　逢莉、弥琴、菊乃に六花と杏、碧南も加わりあっちこっちで雪球が飛び交っている。
　真央は機動力を活かし走りまわりながら的を絞らせない作戦だ。
　走ってる間に雪をすくいそして投げ、再び走りだす。
　普段から陸上部で走り回っている真央にはこれくらい朝飯前なのだ。
　そんな真央の攻撃を障害物を利用し巧みに回避する修。
　真央が隙を見せる瞬間を虎視眈々と狙っている。
「あっ、こら、避けるな！もう少しで当たるのに！」
　六花の投げた雪球は狙った相手になかなか当たらない。
　それどころか狙った相手に逆に当てられている始末だ。
「討ち取ったりッス！」
　そんな六花に雪球を当てた弥琴の後頭部に碧南の投げた雪球が直撃する。
「当てちゃった。ごめんね？」
　もはや誰が敵で誰が味方なのかも分からない。

　そんな様子を寝太郎は校舎内から羨ましそうに眺めていた。
　一緒に遊びたい気もするが、今は明日までに提出しないといけないプリントの仕上げに集中していた。
「仕上がったら混ぜてもらお」
　そう言って気合を入れなおす寝太郎。
　教科書とにらめっこしながら着実にプリントを仕上げていく。

　一方こちらでは駿と時子がのんびりと休憩しながら雪合戦を観戦していた。
「皆さん楽しそうですね」
　時子は持参した水筒には温かいお茶が入っていた。
　それをコップに注ぐと駿へと差し出した。
「駿さんもどうぞ……」
「ん、ありがとう。頂くよ」
　温かいお茶が体へと染み渡る。
　そうしてまったりしているといつの間にか一羽の小鳥が先ほど作った雪とりの上にとまっていた。
「雪とりの上に鳥さんが……」
「あれは……つぐみかな」
　時子は小鳥と話したいと願いろっこんを発動した。
「雪が積もりましたね……。困った事はないですか……？」
　時子の言葉につぐみは一瞬驚いたような素振りを見せたがすぐに警戒心を解いたようで。
「木も土も雪で埋まって食べ物が探せないの」
「そうですか、それは困りましたね……」
　そんな会話も当然の事ながら駿には聞こえていない。
　それに気づいた時子は慌てて通訳をする。
「えっと、雪で食べ物が見つからないそうです」
「ふむ……なるほどねぇ」
「何か私に出来ることはないでしょうか……」
　心配そうな表情の時子。彼女にとって鳥は特別な存在なのだろう。
「確かつぐみは雑食のはずだから、パンとかでも食べれるはずだよ」
　そう言って駿は持っていた鞄からパンを取り出すとその端を千切って時子に渡した。
「さあどうぞ」
　時子がそのパンを差し出すとつぐみは時子の手の上に乗り美味しそうにパンを食べ始めた。
「美味しい、ありがとう！」
「つぐみはなんて言ってるの？」
「美味しいって、ありがとうって言ってます」
　つぐみは二人にお礼を言い再び空へと飛び立っていった。

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寝子島に雪が舞う

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