【球技大会】テニスの部（黒猫組サイド） -前半-｜リアクション

【球技大会】テニスの部（黒猫組サイド） -前半-

その後は終始美咲紀、ひびきのペアが優勢に試合を進めていた。
１ゲーム目とは打って変わって、ブリジット、すばるペアは点は取れてもなかなかゲームは取れない。
それでもブリジットはまだ平静を保っていたが、すばるはそうもいかなかった。
ブリジットに大見得を切った手前、このまま情けない姿を見せ続けるわけにはいかない。
ブリジットに見直してもらわなければ。
その気持ちが空回りし、ブリジットが取るべき球を取る、アウト球にまで手を出してしまうなど、結果的に美咲紀たちへ点を与えることになってしまっていた。
そして、５－２で迎えたラストゲーム。
エンドチェンジの合間にブリジットの怒号が飛んだ。
「いい加減になさい！　すばる、あなた私をなんだと思っているの？」
すばるは目を白黒させている。
「もしあなたが野獣のお城に乗り込む騎士様気分でいるのだったら今すぐ止して！」
「えぇと、あの、ブリジットさん……？」
「今の私はあなたのパートナーでしょう。横に並び立つ人間でしょう。背中に隠れているだけのお姫様じゃないのよ！」
すると、ブリジットはふいとすばるに背を向け、颯爽とコートへ向かった。
しばし呆とその背中を見送っていたすばるは、なにやら晴れ晴れとした表情でそのあとに続いた。

「あのぅ、ひびきちゃぁん……」
位置に付いた美咲紀が情けない声をあげた。
「ん、どうしたの美咲紀」
「あの人すっごいこっち見てる」
「ほんとだ」
あはは、とひびきは笑う。
見れば、すばるはなにやら真剣な面持ちで２人に相対していた。
「対戦相手に見られるのは当たり前だけど、あんな風に見られると、ちょっと怖いよぅ……まばたきしてる？」
「してるしてる」
美咲紀の不安を吹き飛ばすようにひびきは肩を叩いた。
そして、ひびきもすばるを見る。
「ようやく目が合ったね」
呟いて、ひびきはサーブの体勢に入った。
「でも」
とんとん、と球をつく。
「勝たせてなんてあげないよ！」
黄色い球が空高くあがる――

「ありがとね、良い試合だったよすばる、ブリジット」
ひびきはそう言ってネット越しに手を差し伸べた。
試合は黒猫組、ひびきと美咲紀の勝利に終わった。
ひびきが差し出した手を、すばるとブリジットは交互に握る。
「こちらこそ。これからは女の子を甘く見ないようにするよ」
すばるは苦笑した。
「あなたはそんなこと考えてるから遅れを取るのよ……」
ブリジットはあきれ顔だ。
「返す言葉もないよ……でもブリジットさんありがとう。今日は楽しかったよ」
「はいはい。次はもっと上手くなってなさいね」
そんなやりとりをしているすばるを、美咲紀がじっとうかがっていた。
「ん？」
それに気づいてすばるは美咲紀を見る。
「ひっ」
途端に美咲紀はひびきの背後に隠れてしまった。
「どしたの美咲紀。握手しないの？」
「まばたき、してる？」
「してるしてる」
あはは、とひびきは笑って美咲紀の背を押してすばるの前に立たせた。
「あ、美咲紀さんもありがとう」
「う、うん」
すばるが差し出した手を、美咲紀はおずおずと握る。
「よっし！！」
すると突然ひびきが駆け出した。
華麗にバク転を決める。
「勝ったぞぉーっ！！」

――第１試合、黒猫組勝利。