＜宝石人形＞紫黄水晶アメシスタ／シトリム｜リアクション

＜宝石人形＞紫黄水晶アメシスタ／シトリム

　翌日、トキサダからこの事件に関わった顔ぶれへと連絡があった。
　価値を失くしても、石を繋ぎ止めた事。
　人形が、元に戻った事。

　早朝、全てが終わった事を見届けて、信じてもらえない事も、信用を無くす事も覚悟の上で──買い手へと連絡しその全てを話したところ。
　事前にトキサダの代理人として、売約取引の延長を打診していたという暗道忍のやり取りによって、それらの出来事までもが流れるように受け入れられた。
　むしろその神魂の影響に伴う、一連の事件が起こった尋常ならざる話が気に入られ、その日中の取引希望と相成り、当初決まっていた値段よりも高値を払うとまで告げられた程。

　それら全てが明朝に、全員への連絡として届いたが、余りにも急すぎる内容に、人形の取引前にその顔を見られたのは少数となった。

「これが……アメトリア」
　志波武道が、もう昨日のようには動かないのに、そこにある明確な威圧感と、凛とした空気を伴って椅子に腰かけている人形に思わず呟いた。
　動いていること自体が奇異だったが、それでもあの存在感は『石が欠けた半分』だったのだと認識する。
　異常な事態が終わり、全てが平和に戻ったと理解するには、精巧すぎる目の前の人形は『偶然、現実の範囲を出ないだけの非日常』を思わせた。
　それでも──これが帰結。今回の異常事態は終わったのだ、と武道は己の心に強く言い聞かせた。

　受け取りは今日の正午。
　アメトリアの胸には、石の揃った初日に提案されたプラチナの枠台で固定された、樹脂で繋げられたアメトリンの石のペンダントが掛けられていた。

「そうか……二人はこうなるのを選んだんだね……」
　それを目にした恵御納夏朝が、全てが上手くまとまった事と、同時に心のどこかで一抹の寂しさを覚えて呟いた。

「まぁ……これが、当人達が納得できる答えならいいんじゃねぇか」
　夜海霧楓が、その言に触れて誰にともなく言葉を返す。
　楓は、同じ宝石人形であるルヴィアの最後を目にしている。
　石は砕け、それは余りに燦々たる有様であった中──このアメトリアの表情は、何もかもと云う全てに満ち足りた結果である事は明白だった。

「終わったんですね」
　八神修は、アメトリアの様子を見て、傍に佇むトキサダに告げる。
「アメトリアはどんな事を思っているのでしょうか？」
　そのもれいびとしての能力を示唆して修はトキサダに問い掛ける。
　トキサダは、ようやく人を前にして落ち着いた様子で微笑んだ。
「錯覚でなければ……感じるのは『この上ない幸福』──
　どうか、錯覚であって欲しくはない、ですね」
　修はそれに微笑み返すように告げた。
「貴方のその能力は人形を幸せに出来るものだと思います。
　──それが長く、永く続くように祈っています」
　修は、改めてアメトリアを目に入れる。
　アメシスタとシトリムとは全く異なる、凪いだ水面の様な雰囲気を持つ人形だが、それでも修にも──その場の全ての人に伝わって来た。

　それが今、どれだけ幸せであるか、を。

　こうして、一体の内に二体を内包した人形の騒動は終わりを告げた。

　それは誰も悲しみも絶望も得る事のない、おそらくは何よりも満ち足りた結末として──

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あとがき

担当マスター：冬眠
ファンレターはマスターページから！

今回はご参加下さいました皆様、ここまで読んで下さいました皆様、誠に有難う御座いました。ＭＳをつとめさせて頂きました冬眠と申します。

この度は、複数の体調不良が重なったとはいえ大遅延を起こしてしまい、特にお待たせしてしまいました参加者の皆様には誠に申し訳御座いませんでした。
深く反省と共に、今後、体調が持ち直し再び執筆に関わらせて頂く機会を得ました折には、可能な限りの注意を払って参りたいと思います。
ご迷惑をお掛け致しました皆様には本当に申し訳御座いませんでした。

今回のシナリオにつきましては、複数の方面からのアプローチを頂きまして、アクションを拝読しながら驚きを隠せない状態となりました。
大きくは石を探してくださいました皆様と、製作者側に接点を置いてくださいました方と分かれましたが、

『人形の重要パーツである為、石が無くては売り手に売る事が出来ない』
『シナリオガイドの時点で、売られたくないと口にしている為、そちらの説得が無いと、人形が悔いを残したまま売られる事になる』

この２点を今回の線引きとしておりましたが、どちらもそのプラスアルファのアクションを頂きました。
石につきましては、皆様の綿密なアクションを。
説得につきましては、それぞれの思いを深く思案して考えてくださったもので、どちらも執筆させて頂く中で本当に冥利に尽きるものでした。
この度は、参加者の皆様のどなたが欠けておられましても、それがリアクション内にそのまま欠けたものとして現れていたものかと思われます。皆様の素敵なアクション、誠に有難う御座いました。

この度も、簡単と言いながらもアクションから起こり得る結果自体は、そのまま反映させるつもりでおりました為、そちらにより考え得る中での最上の結末となりました。今回は執筆させて頂く中でも、とても嬉しく有り難い物となりました。本当に感謝の念に堪えません。

それでは、この度は本当に有難う御座いました。
また、お会いできます事を、心より深く願いまして。

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シナリオ

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