おっぱいヒーロー見参！｜リアクション

おっぱいヒーロー見参！

【変態紳士と下着ドロ】

　ところで、怪盗ル・パンツのほかにも、寝子おっぱい島にはあまねくその名を知られた下着ドロがいる。

「私はただの下着ドロなどではないのです。そう、言うなれば私は『泥棒猫』。世に猫愛のあらんことを」

　そんなふうに嘯きながら、今日も猫屋敷姫は民家に侵入してたくさんの下着を自慢のコレクションに加えようとしていた。
「そもそも私の窃盗技術はある種の芸術なのです。そのあたりの変態どもと一緒にされたくないのです」
　姫はそう呟きながら、今日も獲物を物色していく。
（下着に貴賤はないですが、やはり女性物の方が種類も豊富で意匠もこだわりを感じるですね。もちろん男性物も差別せずに頂きます。若人のものであればなおよしです）
　ともあれ、姫が類稀なる盗み技術を持つことは紛れもない事実であった。
　なにしろ、彼女は自身の持つろっこん《スクナヒコナ》で身を一寸まで小さくし、野良猫の背中に乗って誰にも見とがめられずに人家に侵入することができるのだから。
　さらに、姫はたとえ人が身につけていようと気に入った下着があればかっさらっていくだけの技術がある。
　たとえば、
「そういえば、さっきの魔法幼女とネコミミ少年のくんずほぐれつはなかなか見ものでしたね。ついつい手を貸してしまいました」
　つい先ほど、来島アカリが怪盗ル・パンツと東条あんずからパンツを強奪されそうになった際、わずかな隙を突いて、ベルトを抜いたのもじつは姫であった。
「ベルトは下着ではありませんが、ついつい面白そうなので盗ってしまいました。あの魔法少女は怪盗の素養がありますね」
　パンツを無理やり脱がすときのあんずの手際の良さを思い出し、姫は思わずくすくすと笑う。
（まあ、私ならもっと上手くやってやるですが……）
　そんなことを考えながら、今日も大量の戦利品を手にそろそろ家へ戻ろうかというときだった。
「おや……？」
　姫は自分と同様の能力を持つと思しき少年が小さくなって地面に立っている姿を発見した。
　極彩色の和服に朱塗りの鞘に納められた日本刀。
　隙のない佇まいと、若さに満ちた端整な少年の横顔が見つめる先には褐色の肌を持つ背の高い少女の姿。
　そのどちらもなんだか盗み甲斐がありそうだ、と姫は思っていた。

（……では、最後にもう一仕事やっていくことにするのです）

　心の中でそう呟いて、姫は背に乗った猫の毛をクイッっと引っ張り、物陰からその少年と少女の様子を窺わせた。