推理ゲーム『ねこじま人狼』2nd｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』2nd

●　怪しまれし者たち

　もくもくと茶菓子を頬張り続けていた優木遥斗は、名前を出されたのを聞きとめると、じっと紅葉を見つめた。見つめたというより睨むに近く、威圧感を感じた紅葉はびくりと肩を震わせる。
　それを見ると、あ、という顔をして、遥斗は少し申し訳なさげに目を逸らした。
「たしかに遥斗くんの役職は気になるよな」
　と武道が言った。
「役職あり島民側と言ってるが、一通り役職はでそろってるんだよなぁ。そろそろ役職明かしてくれるかな？」
　遥斗は無言で武道を見つめ、あれこれと思いを巡らせているようであったが、やがてはっきりとした口調で短く告げた。

「島民の役職であることだけははっきり言える」

「微妙だなぁ。この期に及んでもまだ明かさないのか？」
　春彦が突っ込む。
　遥斗は頷いた。
「現時点で役職を主張している人が本当のことを言っているとは限らないから」
　あまり表情豊かなタイプではなく寡黙でもあるので分かりにくいが、一見して動じている様子はない。
「俺は現時点では遥斗くんがアヤシイ気がするなー」
　衛が軽く挑発するが、遥斗はそれ以上語ることなくまた黙々と食べ始めたので、進行役の武道は別の方向に話を振った。
「そういう卯木君は？　名前出たケド？」

「俺はらっかみ。主張変える気なし」

　盤面が動いたのはそのときである。
　右のこめかみをトントンと叩きながら話を聞いていた壬生由貴奈がおもむろに口を開いたのだ。
　

「はーいはーい、らっかみはうちだよぉ」

　思わぬ言葉に皆驚き、特にらっかみを主張していた衛は、後ろ頭を掻いて由貴奈を見た。
「おもしれー。らっかみが二人になったか。で、今まで伏せてたわけは？」
　由貴奈は眠たそうな瞳でクッキーをぽりと齧ると言った。
「黙ってたのは簡単な理由でさ、本当の占い師がうちを占った可能性を考えてだねぇ、それにカウンターするつもりで伏せてたんだけど……尤も、タイミングを逃しちゃった感はあるかなぁ。悪いねぇ、らっかみ騙ってたうーちゃんには」
　で、と由貴奈は反撃した。
「ところで、うーちゃんの本当の役職はなんだろーね」
　うーちゃん、こと、衛はニヤリとする。
「本当の役職？　それはこっちが聞きたいな、由貴奈さん」
「ふーん、そういう切り返し？　仮にくれはちゃんを本物の占い師と踏んで表明したなら、人狼であると考えるのが自然だけど……あるいは吊られても痛手が少ない狂人かな？」
　衛＝狂人説は紅葉と同じ。ゆえにか、紅葉も頬に手を当て、由貴奈の意見に耳を傾けている。
　らっかみＶＳらっかみ。
　衛と由貴奈の間に、見えない火花が鋭く飛び散る。
　トワがきょとんとして二人の顔を見比べた。
「Wow, らっかみがマモルとユキナの二人になったデス？」
「そう。困ったネ」
　武道が答えると、トワは明るい笑顔を作った。
「両人吊れば、どっちかが人狼の可能性は高いデスカラ、それで証明になるマス」
「ははっ」
　衛が笑った。
「そりゃあいい。俺も由貴奈さんも吊ってくれ！　俺はかまわないぜ？」