推理ゲーム『ねこじま人狼』2nd｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』2nd

●　共有者は何人なのか

　異論はなかった。
　一拍おき、武道は自分に進行役が任されたことを感じ取ると言った。
「じゃー、手始めに……共有者としてまず気になるのはやっぱり天懸君の存在なんだよなー」
　怪盗であることをカミングアウトし、そののち共有者と交換したといったこの少年。
　中学生ではあるが、筋肉質でガタイが良く、武道ですら圧倒されそうな眼光の持ち主。
「俺としてはまず、天懸君の言葉の真贋は明らかにしたいなー。彼の言葉が真実なら、実質共有三人みたいな感じかもしれないし」
　武道の言葉に、もとから口数が少ないらしい優木遥斗も朴訥ながら発言する。
「俺も、新江さんが怪盗であり役職を交換したという話にはかなり関心を引かれてる。あと、共有者の両者の名乗りを待ちたかった」
　『共有者の両者の名乗りを待ちたかった』。その言葉に大きく頷くと、天懸は身を乗り出した。

「俺は怪盗で共有者と交換した」

　すると梢が天懸に尋ねた。
「では聞きますが、あなたは誰と交換しましたか？」
「あんた……屋敷野梢さんっす。交換理由はその……外見がわりと好みだったんで」
　天懸はふいに少年らしい表情をし、ほんのり頬を染めてみたりする。
　好み云々はともかく、自分と交換したということに梢は「へー」と相槌を打った。
「志波先輩と変わったなら『共有者を自称する』という発言は妙ですから、そう言うんじゃないかと思ってました。じゃあなぜ、私と交換したことを言わなかったんでしょうねー。私は言いましたよね。『私を何かで引き当てた方は、気にせずに公開していただいて結構ですよ』と。入れ替わった相手の発言を聞いてませんでした？　……なので、私的には怪盗狂人の線は捨ててませんねー。比較的すぐでしたので、本来の狂人ではないと思いますが」
「それは……」
　捲し立てられた天懸は、やや萎縮したようになりながら言った。
「『怪盗が交換で共有者になった場合、共有者の相方を知ることはできない』というルールのせいっす。俺からは屋敷野さんが共有者なのは明らかだったが、志波さんが共有者かどうかまでは見えなかった。だから志波―屋敷野ラインが確定してから改めて動きたかったんだが、屋敷野さんが占い師だと言い始めて志波さんもダンマリだったんで、身動き取れなくなったっす」
　それを聞いた梢は黙り込み、
「ふむ」
　と武道も思案顔になった。
「なるほど」
　納得したような顔で言ったのはらっかみを主張している衛だ。
「人外の数が３、村役職の数が６人。役職主張が８人だからまあフツーに役職に２人外。島民に１人外だろうな。共有二人はほぼ確定。らっかみの俺も俺視点確定。出目がこうなら天懸くんが交換相手言わずに主張すんのもわかるか。これは言えねーわ」
　言って衛は天懸に、今度はさっきのトワの時とは違ってお詫びの意味で両手を合せる。
「梢くんの主張あるまでそんな感じだと思ってたから天懸くんは軽くジャブいれてごめんな！　今は７割信用してる！」
「７割かよ」
　天懸は不服そうに言ったが、７割疑っていると言われるよりはずっといい、と思い直す。
　すると天懸にいい風が吹いてきたのだろうか、思案していた武道も衛の意見に乗ってきた。
「天懸君の発言は、だいたい俺の予測と同じだなー。天懸君が梢ちゃんとの交換を明言した以上、共有三人村の目は濃くなったんじゃないかなーって思うよ」
　天懸はこれには味方を得たとばかりに口笛を吹いて、表情も明るくなった。
「ほんとに、志波さんの言う通りっす。というわけでこの卓は志波―屋敷野に俺・新江がくっついた３人共有村だと思ってくれたら嬉しいっすはい」
　天懸は拝むように頭を下げる。
「怪盗が島民職を引いて黙っているメリットはないっす。ただ、俺のせいでややこしいことになった気はするし、正直進行は志波さんにお願いするしかないと思ってるっす」
　どうする、と皆は武道を見る。
　武道は軽く咳ばらいをすると言った。
「ん、とりあえず、共有者についてはここまでにしよっか☆　次に気になるのは……」
　武道の視線を天懸も追う。
「今回の占い師……は正直どっちも信用度は低いっすよね」

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