寝子島スペシャル！寝子島探検隊！人食いマンボウは実在した！｜リアクション

寝子島スペシャル！寝子島探検隊！人食いマンボウは実在した！

「こんにちはだよぉ～」
　のてのてと現れるマンボウ君。
「いきなりの登場？」
「この札は、即座に効果をあらわすのか！」

「あれ、マンボウ君？」ののこが首をかしげる。「人食いマンボウは？」
「うーんと、人食いマンボウはねぇ～」のんびりと話し始めるマンボウ君。
　まずい！
　下手なことを口走られたら、万事休す！
　俊敏な動きで、マンボウ君に突進する碧南。
　その急襲が、マンボウ君の意識を宇宙の彼方へ蹴り飛ばす。
　
「人食いマンボウはどこ？」首をかしげるののこ。
　その瞬間、俊通が動いた。

　――わずかでもいい、目を逸らせてくれ！

　無言の願いが、みゆきに届く。
「あー、ののこちゃん、あれ見て、あれー！」
　あらぬ方向を指さすみゆき。
「えー、なになに？」
　咄嗟にそっちを向くののこ。

　俊通は素早く葉月にペイントを渡す。
　心得た葉月、マンボウ君の顔にペインティングを施していく。
　見る見るうちに、昭和の無残画のようなおぞましい化け物へとマンボウ君が変貌する。
　咄嗟にニャーゴンの巫女役、小萩も参加。
　アバンギャルドな彩色が炸裂し、想像を絶するモンスターが誕生する。
「見ろ、野々！」
　修がののこを振り返らせる。
「え……ウワアアアアア！！」
　リアルな恐怖の表情を浮かべるののこ。
「人食いマンボウだな……あの巫女の言う通り、死んだふりをしているぜ」
　豪が頷く。
「さあ、人食いマンボウも見つけたことだし、戻るか……」
「えっと、そういえばマンボウ君は？」

「あー！　ののこちゃん、あれ見て、あれー！」
　あらぬ方向を指さすみゆき。
「えー、なになに」
　背をむけるののこ。
　その瞬間、碧南と俊通が、マンボウ君をひっくり返す。
　まだ彩色のされていない、プレーンな状態のマンボウ君が現れる。
「見ろ、野々。マンボウ君だ。また気絶してるな」
　修の言葉に、ののこは頷く。
「で、人食いマンボウは？」

「あー！」
　指先が遥か蒼穹の彼方を指すみゆきに、
「なになに！」
　ののこは迅速に反応し、
「ていっ」
　またも豪はマンボウをひっくり返す。
　ろっこんを発動させれば楽にいけそうだが、ちょっと気分が『重い』。
「ほら野々。人食いマンボウだ」
　人付き合いのいい修も、ちょっとうんざりぎみ。
「ほんとだー、でマンボウ君は？」

「あー！」
「えー！」
「とりゃー！」
「ほら」
「うわー！」

　――マンボウが半分しかないなら、半分画面に映さなければいいんです！
　せいせいと肩で息をきらしながら、みゆきは笑う。
　――お父さん、変な趣味をしてくれてありがとう！

　落日が血のようにジャングルを染めて、果たして探検隊の運命は。

「人食いマンボウ……」
　円が人食いサイドのマンボウを、しげしげとみる。
「まどかちゃん、あんまり近づくと……」
　そう、人食いマンボウの特技は『死んだふり』。
　うかつに近づけば、喰われてしまう……。

「うーん、確かめるには危険すぎるね……」
　残念そうな円。
　胸をなでおろす一同。

　――その瞬間、飛び出してくる男がいた。

（人外の生命体！）
（恐怖と苦痛の宴！）
（それこそ、俺を解放してくれるもの、とか思っていないわ！）

　目の色を変えて飛び出してくるネヴィア。
　
　修の手に、木製の札があった。
　豪の手にも、キャンピンググッズがあった。
　俊通は、手近にあるものをなんでも武器にできた。
　みゆきは、どんな特技も「失敗」にできるろっこんを持っている。

　あるいは、だれのせいでもないのかもしれない。
　だれが手を下したわけでもないのかもしれない。
　
　ともあれ、人食いマンボウの手前で急にひっくり返ったネヴィアは、岩に頭をぶつけて血潮を噴き上げる。
　だが、時すでに遅し。
「死んだふりから、治らない？」円が不審に気づく。「本当に死んでいるんじゃ……」
「確かめてみよう」
　歩み寄ろうとするののこの前に飛び出す修。
「ぐ、ぐわあああ！！」
　人食いマンボウの手前で横転し、その隙に腕に紫の顔料を擦り付ける。
「好奇心に負けて近寄ろうとしたら……このざまだ」
「修隊員、不用意だぞ！」
　一応言ってみる豪。
　札の下に隠したタオルで、色を拭い去る。
「札の力で、なんとか命はとりとめたが……」
　言いながら修は情けない。
　アドリブの演技は得意じゃない。
（自分の飼い猫の方が、上手くこなせそうだな）
　そんな自嘲が浮かぶ。
「とにかく危険だ、ちかよらないように……」

「一回蹴っ飛ばしてみよう」
　人食いマンボウの腹部にヒールキックをお見舞いしようとするののこ。
「ののこちゃん！」
　必死でとめる一同。
「大丈夫だよ。人食いマンボウだし、一発ぐらいじゃ死なないし」
　ののこの物騒な言葉に「ギュウ」と声を上げるマンボウ君。
「危険だ。止めた方がいい」

「みんな、変じゃない？」

　ぎくっ。
　ののこの指摘に、硬直する一同。
「人食いマンボウの正体を、知りたくないの」
「いや、それは……」
「……ののちゃん、ちょっと」

　不審そうなののこを、円は物陰に引っ張る。

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